2011 Fiscal Year Annual Research Report
超音波可視化・スペクトル解析ハイブリッド法によるOHラジカルの生成条件の最適化
Project/Area Number |
22560056
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山本 健 関西大学, システム理工学部, 准教授 (10370173)
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Keywords | ソノケミストリー / フレネル回折 / キャビテーション / 超音波 / ラジカル |
Research Abstract |
超音波による微小気泡発生(キャビテーション)による力学的作用(衝撃波,ずり),化学的作用(ラジカルの発生)及び熱的作用(高温・高圧場)の積極的な利用面に注目が集まる一方で,物理的立場から音響化学効果を詳細に研究した例は少ない.特に,高分子の分解・合成に深く関与していると考えられているOHラジカルに関しては,キャビテーションの発生条件を含めて未解明な部分が多い. 本研究は,(1)ルミノール発光(∝ラジカル生成)観察と(2)音場の可視化及び(3)発光スペクトル解析の物理的3手法を同時に用いてキャビテーションとラジカルの発生機構の基礎的な解明を目指し,高分子分解等の応用面に新たな可能性を見出すことを目的とする. 平成23年度は,(2)手法による光学的な音場分布の可視化に重点を置き研究を行った.音場の可視化にはFresnel法を採用し,気泡分布の可視化には前方散乱光を用いた.また,OHラジカルの酸化作用によるルミノール発光分布を高感度カメラで撮影し,3つの可視化画像の比較からいくつかの情報が得られた.Fresnel回折の理論より,波面の可視化像の明線は音圧の腹,暗線は音圧の節に相当している.超音波周波数400kHzにおける気泡の共振半径は約8μmであるが,直径約30μm程度の成長した気泡が音圧の節にトラップされていることを確認できた.また,音圧の腹と発光箇所が一致していることが判明した.可視化実験で想定する音圧の定在波中における共振半径以下の気泡は,音場から第一次Bjerknes forceを受け,音圧の腹に向かう.また,共振半径以上の気泡は反対に音圧の節に向かう力を受ける.可視化像の比較から,本システムの感度の範囲ではあるが,観察できる大きさの気泡は,ソノケミルミネッセンスに寄与せず,数~十数μm程度と予想される気泡が発光に寄与していると言える.また,本システムの分解能では,気泡,波面及び発光に大きな位相ずれが見られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
手法(1)及び(2)による音場,気泡及びルミノール発光分布の比較実験は,予定通り進んでいる.今までの定説を裏付ける結果及び興味ある結果が得られた.(3)による発光スペクトルの解析に関しては,キャビテーション発光を観察するガラスセルの設計及び作成が遅れたため,(1)及び(2)手法と比較し,検討する段階には至っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,OHラジカル由来の紫外域スペクトル観察を主に行うため,現在まで使用していたガラスセルのBK7をすべて石英へと変更する.分光においてレンズ系を用いることにより,観察領域全体の発光強度ではなく,ある程度狭い領域の強度測定を目指す.これにより,超音波キャビテーションによるOHラジカル発生量の場所依存性を計測する.また,実験の再現性を高めるため,温度,溶存酸素量及び音響パワーの計測及び管理をさらに精確に行う.複数回の実験を行い,データのエラーを極力抑える.
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