2011 Fiscal Year Annual Research Report
超軽量化機器開発のための展伸マグネシウム合金の疲労機構解明と疲労信頼性の確立
Project/Area Number |
22560075
|
Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
塩澤 和章 福井工業大学, 工学部, 教授 (90019216)
|
Keywords | 疲労 / 変形異方性 / 応力比 / 双晶 / 展伸マグネシウム合金 |
Research Abstract |
展伸Mg合金の疲労強度特性に及ぼす双晶変形及び変形異方性の影響を明らかにし,軽量化機器・構造物の高信頼性・安全性を保証した疲労設計指針を確立することを目的とした. 1.人工時効処理を施したAZ80-T5材の応力および全ひずみ制御低サイクル疲労試験による疲労変形挙動および疲労寿命評価を行い,昨年度実施したAZ31,AZ61およびAZ80の未時効処理材と比較検討を行った. (1)人工時効処理によってα層中にβ層が析出することによって,結晶のc軸配向は軽減化され,引張りと圧縮の耐力の違いは小さくなり変形異方性が減少する傾向を示した. (2)ヒステリシスループの引張側と圧縮側の非対称性が小さくなり,ひずみ制御疲労試験において生じる引張りの平均応力や応力制御疲労試験において生じる圧縮の平均ひずみは他の供試材と比較して小さくなった. (3)塑性ひずみエネルギー密度と引張側の弾性ひずみエネルギー密度の和で与えられる全ひずみエネルギー密度を用いて,全4供試材及び両制御疲労試験の疲労寿命を統一的に整理可能であった. 2.電気油圧制御軸荷重疲労試験機を用いて,AZ31およびAZ80材の応力比R=0,-1及び-1.5の高サイクル疲労試験を行ない,疲労強度特性に及ぼす応力比の影響を検討し,疲労損傷機構を詳細に考察した. (1)R=-1および-1.5条件下で得られたS-N曲線は二段折れ曲がりを示す特異なものであった.一方,R=0条件下では明瞭な疲労限度が認められた. (2)高応力振幅・短寿命域ではき裂発生起点に双晶に起因すると思われる縞状の粗い破面が,一方,低応力振幅・長寿命域では結晶のすべりに起因する平坦な破面が認められた. (3)これらの破面様相の遷移は負荷最小応力と圧縮の耐力の大小関係に起因し,き裂の発生が双晶と結晶のすべりの二つの機構によって生じ二段折れ曲がりS-N曲線を呈することが明らかとなった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
展伸マグネシウム合金の疲労強度特性に及ぼす双晶変形並びに変形異方性の影響について,応力制御および全ひずみ制御低サイクル疲労試験を終了した.高サイクル軸疲労強度特性に及ぼす応力比の影響を明らかにし双晶変形と結晶のすべり変形による二つのき裂発生機構の存在を明らかにした.さらに,ショットピーニング処理による疲労強度特性改善効果について実験的検討を実施した.当該研究者は平成23年4月に富山大学から福井工業大学へ移籍し,実験設備などの移設を行ったため,表面改質材に関する実験結果の整理及び考察の時間的余裕がなく一部次年度に繰り越す結果となった.以上より,研究はおおむね順調に進展していると判断する.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は本研究に関する最終年度であり,以下の研究を実施すると共に,研究のまとめを行う. (1)ショットピーニング処理による疲労強度改善効果に関するデータ整理を行い,処理条件と改善効果の関連を明らかにする.また,表面処理による変形異方性への影響を明確にする. (2)展伸マグネシウム合金AZ31,AZ61およびAZ80の疲労強度特性に及ぼす切欠きの影響について実験的検討を行う.これらの結果を他の金属材料と比較して,本材料の切欠き感受性を明らかにする. 以上の結果を踏まえて,展伸マグネシウム合金の疲労強度特性を総括して機械・構造用強度部材への適用に対する疲労設計上の問題点を明らかにすると共に,疲労設計の指針を確立する予定である.
|
Research Products
(6 results)