Research Abstract |
近年,様々な小型電子デバイスが開発されており,電子デバイスに広く使用されている銅膜材の疲労特性を知ることは重要である 本研究では,銅膜材の疲労き裂伝ぱ挙動を調べるために,膜厚さ100μmで結晶粒径が15μmおよび30μmの純銅膜材を用いて,応力振幅30, 35および40MPa,応力比R=0の条件下で疲労試験を行うとともに,デジタル画像相関法を用いて,き裂開口変位分布を計測した.さらに,EBSD(電子線後方散乱回折)法を用いて,疲労き裂周辺の微小領域における結晶方位解析を行った.その結果,膜材の切欠き穴から生じた疲労き裂伝ぱは,結晶粒径の小さい膜材よりも結晶粒径の大きい膜材の方が速くなった.疲労き裂は屈曲しながら伝ぱし,結晶粒径の大きい膜材の方が大きく屈曲していた.き裂は膜表面では粒界を多く伝ぱし,結晶粒が小さいほどその傾向が強く見られた.しかし,破面を観察すると,内部ではき裂が粒内を伝ぱする箇所が多く見られた.また,き裂開口変位分布は,粒径の大きい膜材の方が大きな値を示した.そして,き裂開口変位分布から変位外挿法で求めた応力拡大係数幅ΔK_<est>と疲労き裂伝ぱ速度da/dNは,粒径や応力振幅によらず相関が見られたが,き裂伝ぱ下限界付近では,結晶粒が小さい膜材の方が,より小さいΔK_<est>でもき裂が伝ぱすることがわかった.これは,結晶粒が小さい膜材の場合,き裂が粒界を伝ぱしやすかったことが原因と考えられる.結晶粒の微細化に伴って,粒界近傍でひずみが集中し,き裂が粒界を伝ぱしやすくなると予想され,この傾向は,厚さ方向に結晶粒数が少ない薄い膜材ほど顕著に表れると考えられる.
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