Research Abstract |
本年度は,「FBGセンサ」と「屈折率センサ」を用いたFRP成形への適用に関する基礎研究と,FBGセンサと屈折率センサを統合したセンサシステムの開発,そして「ラマン分光センサ」についての基礎的な検討を行った.FBGひずみセンサについては,樹脂の二段階加熱硬化成形における硬化ひずみ測定に応用して,最終的な硬化温度が同じであるにもかかわらず,硬化温度パターンによって最終的に生じる残留ひずみが大きく異なるメカニズムを実験的・理論的に明らかにした.また,屈折率センサを,プリプレグを用いたFRP積層板成形のモニタリングに適用することで,硬化度の定量的な測定だけでなく,樹脂のゲル化,加圧による樹脂流動,ボイドの発生と消滅など,FRP成形において重要となる物理量のモニタリングが定性的に可能であることを示した.FBGセンサと屈折率センサを統合したシステムの開発に関しては,波長1300nmと1550nm帯の二種類のバンドを,WDMカプラを用いて結合し,前者を屈折率測定に,後者をひずみ測定に用いたシステムを提案した.これを用いて,片端を屈折率センサとした一本のFBG光ファイバセンサをエポキシ樹脂に埋め込み,樹脂の硬化モニタリングを行うことにより,硬化度と硬化ひずみを同時に測定できることを示した,さらに,開発されたシステムをFRP積層板成形のモニタリングに適用し,FRP成形においても硬化度と硬化ひずみの定量的な同時測定が可能であることを実証した.また,前年に引き続き「ラマン分光センサ」についての基礎的な検討を行ったが,これに関しては未だセンサの基礎能力が不十分であり,本研究で提案するシステムへの統合は困難であると判断した.しかしながら,当初の目的であるFRPの硬化開始から冷却までの成形モニタリングの実現には,開発した「FBG・屈折率統合センサシステム」が十分な能力を持つと見込んでいる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FBGセンサによる硬化ひずみ測定システムの開発,および屈折率センサと組み合わせた硬化度・硬化ひずみ測定システムについては「(1)当初の計画以上に進展」し,FRP成形への適用試験を行い,その有効性を実証した・しかし,ラマン分光センサの要素については十分な成果を得ることができなかった.そのため全体として「(3)やや遅れている」と評価したが,今後は硬化度・硬化ひずみ測定システムに関する研究に注力する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,昨年度に開発された「FBG・屈折率センサ」の能力をさらに向上させるために,光システムの見直しを行う.具体的には,光源の高出力化と受光器の高感度化であり,さらに1550nm帯に屈折率測定用バンドを設ける予定である,また,昨年度に開発したシステムをFRP成形の成形モニタリングに適用し,硬化度・硬化ひずみだけでなくさまざまな有益なデータが得られることが確認されたが,加圧による樹脂流動への影響や,ボイドの発生と消滅のモニタリングに関しては定性的な評価にとどまっている.そこで本年度では,本システムを普遍的に成形に活用するために,センサによって得られたデータと成形中に生じた現象の関係について詳細な検討を行う.
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