2011 Fiscal Year Annual Research Report
表面波から板波への遷移波を利用したGFRP貯槽の長期耐久性評価
Project/Area Number |
22560095
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
和田 明浩 神戸市立工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (60321460)
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Keywords | 機械材料・材料力学 / 構造力学 / 超音波検査 / 複合材料 |
Research Abstract |
本年度は前年度に検討した超音波入射法ならびに,超音波浸透深さのコントロール手法に基づき,内面劣化層を有するGFRP貯槽の超音波検査を試みた.当初は劣化状態の異なる複数のサンプルを入手する予定であったが,これが困難となったため13年間実用されたGFRP貯槽から採取したサンプルを対象に評価を行った.その結果,異なる周波数帯の超音波を軸方向に伝播させても周波数による超音波伝播速度の変化は少なく内面劣化層の状態を評価できなかった.この原因は,サンプルを採取した貯槽の劣化が内面付近の局所領域に限定されているため,超音波浸透深さの相違による伝播速度の変化が検出レベルに達していなかったことが考えられる. 上記のような比較的軽度な内面劣化状態を判定する手法として,板厚方向に伝播させた超音波の反射波分析に基づき反射係数分布の評価を試みた.初めに,片面に人工的な劣化を付与したGFRP試料を対象として,内面反射波分析により反射面の粗度を評価できることを確認した.次に,実用されたGFRP貯槽から採取したサンプルに対して同様の評価を行い,反射係数分布の変化がGFRP貯槽内面の劣化判定の指標になることを見出した.従来も板厚方向の超音波測定の検討は行われているが,内面劣化がある程度進行すると受信波形が乱れ内面反射波の特定が困難となる.しかし,本研究で提案した反射係数分布の変化を用いることで,内面反射の時間領域の特定が容易となり,劣化したGFRP貯槽の板厚が測定可能であることがわかった. 以上の研究成果は,内面劣化の進行初期段階においては、GFRP貯槽側壁の面内方向の超音波検査は適さず,板厚方向の反射波分析が有効であることを示すものであり,今後の研究遂行の指針となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は当初計画していた通り,超音波の入射法の確立および板厚方向の超音波浸透深さの実測を行い,GFRP貯槽では周方向よりも軸方向の超音波計測が評価に適していることを見出した.今年度の当初予定では,板厚方向の劣化状態が異なるGFRP貯槽サンプルを入手し,超音波の浸透深さ変化による伝播速度の変化を評価する予定であったが,入手できたサンプルの劣化が比較的軽度であったため,超音波の浸透深さに基づく評価が困難となった.そこで,板厚方向の反射波分析に基づく反射係数分布の評価を加味することで,軽度な内面劣化にも適用可能な検査方法の提案を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の最終年度にあたる次年度は,本年度までに得られた研究成果をもとにGFRP貯槽に対する内面劣化評価手法の確立を目指す.ただし,劣化状態が大きく異なる実物サンプルを入手することが困難なため,薬品や熱により人工的に片面劣化させたサンプルを評価対象とし,「超音波浸透深さに基づく評価」および「板厚方向の反射係数分布に基づく評価」の両面から超音波検査の適用性を検証する,また,貯槽運転中の検査を想定して内面を液体に浸した場合の影響も評価する.最後に,評価サンプルの力学的試験を行い,超音波検査結果との相関を調査することで,超音波によるGFRP貯槽の残存強度判定の指針を提案することを目標とする.
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