Research Abstract |
CVD法で大量に作製されたカーボンナノチューブ(CNT)は,一般的に低品質である.本研究ではCNTの品質が樹脂基複合材料に及ぼす影響を解明することを目的とする.まず垂直配向した長尺CNTをrfプラズマCVD法により合成した.その結果,太さ10nm,長さ800μmの長尺CNTが得られた.しかしCNTの品質を示すI_D/I_G値(ラマン分光によるDバンドとGバンドの比)は0.74~1.34であり低品質であった.そのため,合成によって作製した長尺CNTと,比較用にCVD法による市販品で50μmと短いCNTに熱処理による品質の向上を試みた.その結果,ともに品質の向上が確認され,2000℃で30分熱処理すると,長尺CNTではI_D/I_Gが0.99から0.09に,市販のCNTではI_D/I_Gが1.65から0.43へとなり,大幅な品質の向上に成功した.次に,I_D/I_Gを変化させたこれらのCNTとポリカーボネート樹脂と混ぜてCNT/PC複合材料を作製した.電気的特性および機械的特性を評価した.その結果抵抗率はI_D/I_Gが低いCNTを使用したサンプルほど低い傾向にあり,最も抵抗率が低いサンプルは,長尺CNT,市販のCNTともに未処理のものに対して,抵抗率が10分の1程度に減少した.また,長尺CNTを用いたサンプルは,市販のCNTを用いた場合よりも抵抗率が100分の1程度であり,表面抵抗率は10^2~10^3Ω/sqであった.機械的特性は,長尺CNT,市販品のCNTともに,未処理で低品質のCNTを使用したサンプルが最も補強効果が得られ,長尺のCNTを1.5vol.%添加した場合,ヤング率が25%,引張強度が16%向上し,市販品のCNTを1.5vol.%添加したサンプルはヤング率が19%,引張強度が12%向上した.これは,低品質のCNTほど表面が活性で,樹脂との接着力が強いためであると考えられる.破断面の観察により未処理のものは,CNTが破断しているが,高品質のCNTを用いたものは,一部で繊維の引抜けが起きており,樹脂との接着力の低下が確認された.補強効果が得られなかったサンプルは,脆性的に破断し破断面には繊維の引抜けが多数確認された.CNTの品質が良いほど単純に樹脂基CNT複合材料としての特性も高いとは限らず,高品質のCNTの特性を十分に発揮できるような表面処理,成形方法の必要性が判明した.
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