Research Abstract |
本研究は,除菌や洗浄,人工光合成などへの応用が期待される酸化チタン膜において,その光触媒機能を向上させるため,純チタン板の微小引っかき加工に陽極酸化を組み合わせることにより,従来の酸化チタン微粒子の焼結では難しかった,高強度かつ高機能の酸化チタン膜を開発することを目的とする.高強度はバインダレス製造により,高機能はナノ・マイクロ・ダブル掘起し表面テクスチャの導入に伴う表面積および光吸収率の向上により成し遂げる.平成23年度は,前年度に得られた引っかきによる微小掘起し加工結果を参考に,微小かつ複雑な表面テクスチャを創成するために好適な条件を見極めた上,切込み深さ5μm,送り1μmで高速引っかきすることにより得られた初期表面(1μm周期で数百nmの深さの肩部に掘起しを伴う溝が形成)を,三軸加工機上で単結晶ダイヤモンド三角錐圧子(稜をすくい面)とファスト・ツール・サーボを用い,とくに切込み深さを数μmの振幅および数百Hzの周波数で正弦波状に変化させ,約20μmの送りで行った引っかきにより,純チタン平面上に溝の各寸法の変化はもちろん,肩部に形成される掘起しの寸法も変化に富んだ表面テクスチャの創成を試みた.その結果,前述の初期加工による表面凹凸(ナノ掘起し溝)が形成された表面に,さらに溝の面内周期および高低差ともに10μm未満の微小掘起しテクスチャを製造可能なことを明らかにした.そして,そのような加工により得られた微小テクスチャを有する純チタン表面を開発した装置で陽極酸化することにより,酸化チタン膜を製造した.その結果,酸化チタン膜厚が40nm程度になること,および引っかきにより創成されたテクスチャ表面に,さらに500nm未満の規模のオレンジピール構造が形成されることがわかった.これらの成果から,提案手法によりナノ・マイクロ・ダブル掘起し表面テクスチャが製造可能なことがわかった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,平成23年度に製造可能であることが明らかになったナノ・マイクロ・ダブル掘起し表面テクスチャを有する酸化チタン膜について,実現可能な範囲で最適な加工条件を用い,さらに複雑かつち密なナノ・マイクロ・ダブル掘起し表面テクスチャを有する酸化チタン膜を製造するとともに,その光触媒機能を評価し,提案手法の有用性を検証する.そして最後に,3年の助成期間において得られた成果を報告書にまとめる.
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