Research Abstract |
硬質炭素系膜の代表であるDLC(Diamond-like Carbon)膜は高硬度,低摩擦,耐摩耗性,低相手材攻撃性など良好なトライボロジー特性や,優れた化学的安定性,電気抵抗の制御が可能といった多くの特徴を持ち,最近特に,いろいろな分野での実用化を目指した開発がおこなわれている,しかし,更なる活用を狙った場合に,使用環境によっては膜付着力あるいは耐熱性などの点で課題も指摘されているのが現状である.そのような中で,本申請研究はDLC膜の耐熱性改善に焦点を絞り,これまでに報告例の無い800℃と高温の温度環境下でも十分な性能,特にトライボコーティングとしての特性を発揮できる膜の開発を目的とする.より具体的に説明する.申請する内容になる研究分野では,環境影響の抑制,省資源,コスト削減の観点から加工液を使用しない機械加工(ドライ加工)が求められ,それに利用できる工具(被覆工具)の開発が望まれている.また,光ピックアップ機器,光通信機器などの高性能化のためのガラスレンズを成型する金型に利用できる高温耐久性の優れる離型膜の開発,しかも光学的ナノフラット膜の開発が望まれている.そして,自動車エンジンの性能向上への耐熱性固体潤滑膜の開発が望まれている.当申請研究において開発するコーティングは,このような領域に活用可能なもので,最適化でき特性向上が達成されるならば,耐久性の優れる硬質炭素系DLCコーティングの開発という実用的フィールドにつながる技術開発研究であり,実用化されたときの波及効果は大きいと考えられる.これらの研究遂行のために申請者の研究室に導入されている設備である高圧パルスバイアスCVDプロセス(PBII)とスパッタリングを複合化した装置を活用した.ナノコンポジット膜は,炭化水素系原料ガスを用いたCVD反応によるマトリックス硬質炭素の形成と,Si含有有機金属系液体を副原料とするプラズマCVDによって形成した.形成した膜を400℃,600℃と熱処理を行い,その後の特性評価を行った結果,熱処理前と同様な,低摩擦挙動,ナノインデント硬さなどを有することを確認した.
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