2010 Fiscal Year Annual Research Report
ボルツマン方程式のモンテカルロ解析におけるノイズ低減スキームの構築に関する研究
Project/Area Number |
22560159
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松本 裕昭 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (10251753)
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Keywords | 分子流体力学 / 希薄萍気体流れ / ボルツマン方程式 / モンテカルロ解析 / ノイズ低減 |
Research Abstract |
真空環境や,ミクロスケール技術を用いる分野の気体流れは,系の代表長さが分子の平均自由行程と同程度のオーダーとなり,ボルツマン方程式を基礎とした分子レベルからの解析が必要となる.現在,ボルツマン方程式を解析する技法として,工学的な諸問題への柔軟な対応性と計算精度の見地から,直接シミュレーション・モンテカルロ(DSMC)法が有力である.DSMC法は現実に存在する膨大な数の分子から抽出した数百~数万の模擬分子の挙動を確率・統計的に計算することで,巨視的物理量を計算する点に特徴があるが,その物理量には統計的な誤差(ノイズ)が含まれる。従って、工学的な観点から、ノイズを低減させる効率の良い計算技法の構築が強く望まれている。本研究では、DSMC法の特徴を活かしつつ、ノイズを低減させるスキームを構築することを目的とする。本年度は分子速度に重みを導入し,平均値のノイズと重みの関係を検討した.まず,ミクロスケールの気体流れは,平均速度の小さな流れを対象としていることが多い点に注目し,流れ場を近似的に局所平衡状態にあると仮定する.次に,分子の熱速度に対しMaxwellの速度分布関数をあてはめて,その値を重み係数とする.この手法により分子速度の平均から得られるマクロな流速を計算したところ,重みをつけない平均流速よりもノイズが飛躍的(1/100以下)に減少することが確認された.また,重み係数ほ,分子の熱速度の各成分に設定する必要は必ずしもなく,その大きさについて与えれば十分であることやノイズを十分に小さくするためには,少なくとも200個程度の模擬分子数が必要であることを明らかにした,本年度の研究により,DSMC法におけるノイズ低減法の基礎となる重要な成果が得られたと考えられる.
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