2011 Fiscal Year Annual Research Report
ボルツマン方程式のモンテカルロ解析におけるノイズ低減スキームの構築に関する研究
Project/Area Number |
22560159
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松本 裕昭 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (10251753)
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Keywords | 分子気体力学 / 希薄気体流れ / ボルツマン方程式 / モンテカルロ解析 / ノイズ低減 |
Research Abstract |
真空環境や、ミクロスケール技術を用いる分野の気体流れは、系の代表長さが分子の平均自由行程と同程度のオーダーとなり、ボルツマン方程式を基礎とした分子レベルからの解析が必要となる。現在、ボルツマン方程式を解析する技法として、工学的な諸問題への柔軟な対応性と計算精度の見地から、直接シミュレーション・モンテカルロ(DSMC)法が有力である。DSMC法は現実に存在する膨大な数の分子から抽出した数百~数万の模擬分子の挙動を確率・統計的に計算することで、巨視的物理量を計算する点に特徴があるが、その物理量には統計的な誤差(ノイズ)が含まれる。従って、工学的な観点から、ノイズを低減させる効率の良い計算技法の構築が強く望まれている。本研究では、DSMC法の特徴を活かしつつ、ノイズを低減させるスキームを構築することを目的とする。昨年度は、一様な空間の流れ場について、分子は近似的に局所平衡状態にあると仮定し、分子の熱速度に対しMaxwellの速度分布関数をあてはめて、その値を重み係数とすることでマクロな流速のノイズが、重みをつけない流速のノイズよりも飛躍的(1/100以下)に減少することを確認した。本年度は昨年度の成果を基に、速度勾配のある流れ場について、ノイズ低減効果を検討した。計算領域を格子(セル)に分割し、分子を移動させ、各セルで分子間衝突の計算を行い、局所平衡分布を推定して、各分子の重みを更新しマクロ量を求めた。その結果、分子の移動および格子(セル)内における分子間衝突により、セル間のマクロな運動量およびエネルギが、必ずしも保存されないことが明らかになった。当初の研究目的を達成するためには、例えば分子を生成・消去することにより分子の移流や衝突により変化するマクロな運動量とエネルギを統計的に満たすようなスキームを導入する必要がある。当初の計画を十分達成できなかったが、DSMC法におけるノイズ低減法を確立させるための問題点を明確にすることが出来て、今後の発展につながる重要な成果が得られたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
速度勾配のある流れ場においては、分子間衝突とマクロ量の計算のために使用するセル間で、分子の移流と衝突により、マクロな運動量とエネルギの連続性が十分満たされない場合のあることが明らかになり、その対策に時間がさかれたため
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Strategy for Future Research Activity |
速度勾配のある流れ場において、分子の移流・衝突により十分に似たされなくなるマクロな運動量とエネルギについて、これらを保証するようなスキームの導入を検討する。具体的には、Markovの確率過程等を用いて分子を再生・消去することにより統計的にマクロな運動量とエネルギの保存を満たすようにすることを試みる。
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