2011 Fiscal Year Annual Research Report
伝熱面の濡れ性の向上による限界熱流束促進機構の解明
Project/Area Number |
22560185
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坂下 弘人 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (00142696)
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Keywords | 限界熱流束 / 濡れ性 / ナノ流体 / 沸騰 / マクロ液膜 / 発泡点密度 |
Research Abstract |
本研究の目的は、伝熱面近傍の気液挙動の詳細な測定を通して,濡れ性の向上による限界熱流束促進機構を明らかにすること,および高熱流束機器の受動的除熱法として大きな可能性のある「ナノ流体」による限界熱流束の促進について,その促進効果を最適化するための見通しを得ることである.昨年度は実験装置の製作と,ナノ粒子の伝熱面への析出方法の確立,および伝熱面近傍の気液挙動測定を一部実施した.その結果,ナノ粒子の析出によって伝熱面の濡れ性は大幅に向上し,水の限界熱流束は清浄面に比べて約2倍に促進されることが明らかとなり,ナノ流体を用いた限界熱流束促進法の工学的有用性が確認された.この結果を踏まえ,本年度は熱流束条件を広範囲に変えて本格的な測定を実施した.水に直径25nmの酸化チタンを添加したナノ流体を沸騰させることで伝熱面にナノ粒子析出層を形成させ,触針プローブにより伝熱面近傍の気液挙動を詳細に測定した.その結果,伝熱面を覆う合体泡下に存在する液層領域の厚さが,ナノ粒子析出面では清浄面に比べて顕著に増大することが明らかになった.この液層領域厚さの違いが,ナノ粒子析出面の限界熱流束を促進させていると考えられる.また,ナノ粒子に直径100nmの酸化アルミニウムを用いた測定も実施したが,直径25nmの酸化チタンと同様の結果が得られ,ナノ粒子の種類や粒径が限界熱流束束促進に与える影響は小さいことが示唆された.濡れ性の向上によって厚い液層が形成される機構を検討するため,5~40気圧の範囲で発泡点密度の測定を行った.高圧で実験を行う目的は,発泡点を増加させ気泡径を減少させることで測定精度を向上させること,およびナノ流体による限界熱流束促進の高圧域での適用の可能性を検討するためである.測定の結果,ナノ粒子析出面の発泡点密度は清浄面に比較して減少するが,その度合いは高圧域では低下する傾向を示すことが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,濡れ性の向上による限界熱流束促進機構を明らかにすることである.本年度の研究の結果,濡れ性の向上により,液層領域の厚さが増大することが示され,これが限界熱流束促進の要因であることが明らかとなった.また,濡れ性向上により発泡点密度が減少することも明らかとなり,これが厚い液層形成の大きな要因であると考えられる.以上,本研究の目的は相当程度達成されたと見なせることから,当初の計画通りに研究が進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
濡れ性を広範囲に変化させて,伝熱面近傍の気液構造および発泡点密度の測定を行い,濡れ性の変化によって伝熱面と蒸気塊の間に存在する液層領域の厚さが影響を受ける要因を特定する計画である.これによって濡れ性の向上による限界熱流束促進機構を解明できると考えている.なお,伝熱面の濡れ性は,ガンマ線照射によっても変化させることが可能なため,当初計画では本学のガンマ線照射施設を使って濡れ性を広範囲に変化させる実験も計画していた.しかし,当該施設が平成23年度で廃止になったため,この計画は中止することになった.ただし,ナノ粒子の析出状態を変化させることで伝熱面の濡れ性を広範囲に変化させることが可能であることが判明したため,この計画を中止しても課題の遂行に大きな支障は無い.
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