2011 Fiscal Year Annual Research Report
シリコンコンサートホールのための音響レンダリング手法の高精度・高速化
Project/Area Number |
22560233
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
土屋 隆生 同志社大学, 理工学部, 教授 (20217334)
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Keywords | シリコンコンサートホール / 音響レンダリング / WE-FDTD法 / GPU / 数値分散 |
Research Abstract |
音響レンダリングは,CGにおけるレンダリングと同様に形状データ等を基に3次元音響空間をコンピュータ上に構築し,臨場感あふれる音響情報を提供する技術である。本研究グループでは,コンサートホールのような大規模な音響空間をリアルタイムでレンダリングする"シリコンコンサートホール(SiCH)"の実現を目指している。SiCHでは,レンダリング手法に波動方程式に基づく時間領域差分法(WE-FDTD)法を採用しているが,差分法に基づく数値解析手法では伝搬波長が空間サンプリング周波数に近づくに伴い,数値分散誤差が顕著に現れることが知られている。本研究では,これらの数値分散誤差の軽減法と高速化手法の開発を目的としている。 今年度はまず,高速化手法としてGPUに着目しマルチGPUシステムを構築した。このシステムは,前年度構築されたPCのPCI ExpressスロットにTesla GPUボード(購入備品)を2台装着したマルチGPU構成となっており,IGPUに比べ約2倍の演算性能を有する。このシステムに,3次元WE-FDTD法を実装したところ,シングルGPUに比べ約2倍の性能向上を確認できた。また,従来のFDTD法に比べて約2.8倍の高速化が実現できた。 つぎに,数値分散誤差の軽減法として,数値分散誤差が再生音に与える影響について検討した。前年度では,サンプリング周波数がCDサンプリング(44.1kHz)程度であれば,誤差がほとんど気にならないと結論づけたが,その後さまざまな楽曲について検討を行った結果,高音域を多く含む楽曲では耳障りなノイズとして再生された。これは,前年度では完全な無反射境界が実現されていなかったため,誤差が反射音に埋もれてしまい,十分な評価が行えなかったためで,完全無反射境界(PMDを開発することで,より厳密な評価が行えるようになった。その結果,80kHz程度までサンプリング周波数を上げれば,誤差成分の周波数帯域が聴覚の範囲を超えるため,高音質で再生可能であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主題の1つであるGPUによるレンダリングの高速化については,概ね計画通りに達成されていると考えている。一方,数値分散誤差の軽減については,誤差の性質評価は計画通りに進んでいるが,積分方程式法を用いた結合解法については,大規模化にハードルが存在していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,現有設備も動員してGPUクラスタシステムを構築することでより一層の高速化を推進し,実用的な室容積の空間について高音質なレンダリングを試みる予定である。また,レンダリング結果は,現有設備である21chスピーカアレイシステムに出力し,音質や奥行き感の評価を実施予定である。一方,数値分散誤差の軽減については,当初計画の積分方程式法を用いた結合解法が大規模化に問題点があるため,WE-FDTD法の高精度化による誤差軽減へと計画の変更も視野に入れる必要がある。
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Research Products
(2 results)