Research Abstract |
パワーアシストシステムは高齢社会に必需となりうるが,その操作性については人間の感覚的なものに左右され,評価及び性能向上が難しいとされてきた.一方,心理学の分野では,物体を移動させる際の物体の重量知覚特性について解析されてきた.このような人間の重量知覚特性は,物体のサイズや質感により変化すると言われているが,パワーアシストにより物体を移動させた際の人間の重量知覚特性については研究例がない.本研究の目的は,パワーアシスト操作時の人間の重量知覚特性を解析し,それを考慮したパワーアシスト制御系設計手法を確立し,従来のシステムに比べて格段に操作性を向上させることである. 研究代表者はすでに,ボールねじによる簡易的な垂直1自由度アクチュエータを用いて,「パワーアシストされていない物体に比べ,パワーアシストされた物体の方が軽く感じる」という現象を発見しており,その原因を追及する必要がある.平成22年度では,制御遅れの少ないリニアアクチュエータを利用して,上記の原因を探るとともに,制御遅れ以外の要因についても確認した. まず,リニアモータアクチュエータ及び力センサーにより,1kg程度の物体を垂直1自由度に操作できるパワーアシスト装置を試作し,コンピュータ及び制御ソフトウェアにより制御システムを構築した.構築したシステムを操作した際の人間の重量知覚特性において,心理学で知られているシャルパンティエ効果や力のピークと重量知覚特性との関係が同様に発生することを確認し,その原因がほぼ制御遅れによるものであることが確認された.さらに,垂直1自由度に拘束された物体と拘束されていない物体の重量知覚特性を調べた結果,拘束された物体の方が軽く感じることを発見した.これにより垂直1自由度に拘束されたパワーアシストシステムでは,制御遅れ以外にも自由度を拘束することによる影響も存在することがわかった.
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