Research Abstract |
進行波型直接エネルギー変換器の変調過程では,過去に系統的な実験研究はほとんど見当たらない.この課題の目的は,実験的に変調方式の特徴を調べ,より良い変調方式を見出すことである. まず,主眼である電極系の違いによる変調効果の違いを調べるべく,単一対一様電界電極系と二対一様電界電極系との比較を行った.変調される粒子数の観点では,昨年度からの結果と同様,期待する十分な効果が得られていないが,エネルギー拡がりのすそ野に着目して,部分変調効果として評価した.二対では,単一対に比べてほぼ二倍のエネルギー拡がりがあることを確認し,少なくともエネルギー拡がりに関しては予想と矛盾せず,実験ハードウェアに問題がないことを確認した.さらに,二対で前段と後段の変調電圧の位相差を変化させてエネルギー拡がりを調べると,期待通りに位相差に対する正弦関数的な変化が得られた.これらの結果は,5月の国際会議とその論文で発表した. 単一対一様電界電極系での変調粒子数の問題を解析するために,解析実験を行った.プローブを設置して変調電極間の粒子挙動を調べたところ,イオンビーム電流に匹敵する電子電流が観測された.これはビームが電極に衝突して発生する二次電子によるものと考えられる.変調電界領域に多数の電子が存在する場合,変調電界を電子が遮蔽して,変調効果が十分に得られない可能性があり,問題の原因である可能性がある, 一方,当初研究計画にもある数値計算コードについて,問題の解析に使用するべく,予定を繰り上げて整備を進めた.整備の観点は,空間二次元化と粒子自身による空間電荷電界の導入である.ビームの粒子密度が増大すると,想定される変調による粒子の集群が,空間電荷電界により乱される現象を確認した.乱れが顕著となる密度の閾値は,ほぼ実際の実験条件付近であり,問題の原因として空間電荷電界による変調効果め低減の可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れの最大の原因は,単一対一様電界電極系という単純な系にも関わらず,期待している十分な変調効果が得られないことである.研究計画当初の構想で進めるためには,原因を把握して改善する必要があり,そのために原因を解析する実験を行ってきたことが遅れの理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
課題を推進する方向性については当初計画の変更はない.現時点で,十分な変調効果が得られない原因を完全には把握できていないので,単純に同じ計画では目的の遂行が難しい.残された研究実施期間で当初目的を達成するために,二つの方針を採ることとする.1)今年度発案して行った部分変調効果を評価することにより,変調方式間の比較を進める.2)複数段にわたる変調方式においては,上流での変調に,従来行ってきて実績もあるイオン引出電極での単一一様電界を用いることで,変調系全体として十分な変調効果を得ることを狙う.十分な変調効果が得られない原因は模擬実験における装置制約等と予想されるので,これらの方策で当初目的の達成を目指す.
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