Research Abstract |
本研究は,超高入力インピーダンス接触型電位計を用いて新奇な計測システムを開発し,絶縁性フィルムと金属板の接触-分離時の表面間電位差を,表面間距離の関数として直接測定する方法を確立しようとするものである。これにより,いわゆる摩擦・接触帯電時の帯電量決定プロセスが,接触による電荷発生プロセスなのか,あるいは接触面分離時に生じる放電による電荷緩和プロセスなのかと言う,これまで続いて来た学説論争に終止符を打つ,「学説選択実験」を実現することを目標としている。 本研究第二年度である平成23年度には,初年度平成22年度に設計・作製した装置の運転を行いつつ,同装置のチューニング及び,いくつかの改良を行った。 1.高分子フィルムと金属平板の接触・分離系の確立: 接触ギャップを1μm以下の精度で制御・計測しつつ,0~数十μmの範囲で変化させることができ,更に,粗動条件では10μm程度の制度で1000μm程度までギャップを変化させられるような,高分子フィルム-金属平板の接触・分離機構を,粗動・微動ピエゾステージによるハイブリッド-軸駆動ステージによって実現した。変位計測系について,初年度に導入した比較的ダイナミックレンジの大きい計測系から,高精度・小ダイナミックレンジのものに変更。併せて,これまで手動動作であった粗動・微動動作系にシーケンシャル制御可能な動作コントローラを追加し,現在,自動計測可能なように装置全体を改良中である。これにより,センサドリフト時間に対して十分短時間での計測を可能にする。 2.表面間電位差変化の,0~2kV程度のレンジでの計測の実現: 超高入力インピーダンス接触型電位系のプローブを改造して,高分子フィルムの裏側から固定し,この測定ヘッドを上記ギャップ駆動系と接触させるようにした。いくつかの試験的計測の結果,プローブ先端と対向接触金属板の,初期の接触の確立に問題があることが解っており,この点についての検討・改良を試みた。特に,高分子フィルムをヘッドに固定する方法が単純には実現不能であることを明らかとし,現在,金属製プローブヘッドに高分子材料をコーティングした特注品を作製して,これを用いた接触系の確立に取り組んでいる段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画全体では,提案の新規計測装置の完成とこれを用いたデータ取得を通じた,同測定法の「確立」が本研究の目標である。現在,研究計画段階で構想した装置は完成したので,達成度は50%と評価できる。一方,実際に装置を作成してみると,構想段階では解らなかった問題点があって,この解決に試行錯誤的に取り組んでいる段階であって,「完成」までにはいま少しの努力が必要であると考えられる。3年間の研究計画で2年間が経過して現在,調整の最終段階にあるとはいえ,当初構想装置が完全には動作していないことから,自己点検区分は「やや遅れている」と評価せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究の遂行によって,前項にも記した通り,研究計画段階で構想した装置は「ほぼ」完成している。目標とする計測の実現にはやや手間取ってはいるが,本研究最終年度にあたって,特段の「研究計画の変更」の必要性があるとは考えておらず,これまでに作製して来た新規測定系のチューニングを進めて,計画(構想)に沿う形での信頼性のあるデータ取得を実現するのが,本年度の研究推進の方針と目標である。
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