2011 Fiscal Year Annual Research Report
パルスパワーの新応用技術開発‐極短高電圧パルスによる受精卵への物質導入‐
Project/Area Number |
22560290
|
Research Institution | Ariake National College of Technology |
Principal Investigator |
河野 晋 有明工業高等専門学校, 電気工学科, 准教授 (30270375)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 伸明 有明工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (30227631)
|
Keywords | パルスパワー / 物質導入 / 受精卵 / メダカ / シクロヘキシミド / アクチノマイシン |
Research Abstract |
ブルームライン線路型パルスパワー発生装置による単発の矩形波高電圧パルス(100ns,1.2kV)をメダカ受精卵に印加することで,電気的ダメージを抑えつつ化学物質(シクロヘキシミド)を導入し,8割以上の受精卵に成長遅れを発生させることができた。このとき,塩水(30mS/cm)にシクロヘキシミド(10μM)を混入させたものを周囲溶液(90μL)とすることで,パルス発生装置と反応容器の整合を取っていた。しかし,導入物質を他の化学物質に変更すると,反応容器の抵抗値変化に起因する出力電圧のバラつきが発生した。そこで,塩水の導電率を5mS/cmとし,抵抗(25Ω)を並列接続することで電圧の安定化を図った。この変更により矩形波パルスの最適な充電電圧は3.6kVと増加したが,物質導入の結果において変化は見られなかったため,6月以降この条件で実験を継続した。 これまで用いてきた"単発"の矩形波高電圧パルスではシクロヘキシミドの導入量を増加することや,分子量の大きい化学物質(アクチノマイシンD)の導入は困難であることが分かった。そこで,本年度は新しく"2連続"パルスシステムを設計製作した。このシステムは,低い電圧波高値で長い時定数の減衰波(66μs,60V)と,高い電圧波高値で短いパルス幅の矩形波(100ns,3.6kV)を,反応容器に続けて出力することができ,パルス出力順やパルス間隔の調整も可能である。ダブルパルスシステムを用いた導入実験を行い,最適なパルス条件を調査した。ダブルパルスシステムによる実験では,"単発"の矩形波での結果と比較して,メダカ受精卵に著しい成長遅れを観測することができた。また,"単発"の矩形波では導入することが困難であった化学物質アクチノマイシンDの導入を示す結果も観測された。一方で電気的ダメージを受けたメダカ卵の割合には増加が見られなかった。これより,2連続パルスシステムがメダカ受精卵の物質導入には有効であることを示すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各電圧パルスが電気的影響を及ぼす範囲の調査,それらを組み合わせたダブルパルスシステムの構築,それを用いた物質導入の最適条件調査等に関しての実験は進んでおり,化学物質(シクロヘキシミド,アクチノマイシン)の導入も確認できている。また,実験システムの生物実験室への設置も完了しており,実験効率は上がっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
化学物質(シクロヘキシミド,アクチノマイシン)が導入されていることは,発生遅れから確認できている。今後,印加パルスの組み合わせや反応容器の電極形状の最適化を行い,分子量の大きな化学物質の取り込みが可能であるかを調査する。また,顕微鏡による目視の影響観測だけではなく,電気的影響等を遺伝子レベルで調査する予定である。
|