Research Abstract |
光の3原色の内,赤,青に比べて緑,特に550nm付近の純緑色はLEDのパワー効率が極めて低いことから,LEDの世界ではグリーンギャップと呼ばれ、克服すべき課題となっている。本研究は,ホモ接合構造においても市販品の緑色GaP LEDを凌ぐパワー効率を有する緑色ZnTe LEDを実証した先の我々の研究成果を発展させようとするもので,ZnTeを活性層とし,緑色に対し透明でかつ高密度でキャリア閉じ込めを可能にするZn_<1-x>Mg_xTe,混晶をグラッド層とした高品質なZnTe系ヘテロ構造を開発することを目的としている。平成22年度では,(1)PドープZn_<1-x>Mg_xTe基板の高キャリア密度化,(2)PドープZnTe系(ZnTe, Zn_<1-x>Mg_xTe)エピ層の高品質化,(3)LEDの性能に関する知見を得るためZn_<1-x>Mg_xTe/ZnTe/Zn_<1-x>Mg_xTeヘテロ構造の評価を目指した。以下に,主な成果を要約する。(1)ブリッジマン結晶のMg組成と電気的性質の関係を明らかにすると共に,電気的性質の測定温度変化とフォトルミネッセンス特性から補償効果について考察し,高品質結晶であることを実証した。(2)有機金属気相成長法において,PドープZnTeエピ膜の電気的性質の測定温度変化のVI/II供給量比依存性を明らかにでき,エピ層の高品質化のための最適条件が決定できた。また,Zn_<1-x>Mg_xTeエピ膜のMg組成を制御するための成長条件が確立でき,成長時のPドーピングと成長後のアニール処理を併用することにより,10^<18>cm^<-3>を越える高キャリア密度のp型Zn_<1-x>Mg_xTeエピタキシャル膜を達成すると共にアニール処理効果が掌握できた.更に,p型Zn_<1-x>Mg_xTeエピタキシャル膜の表面粗さを従来より1桁以上下げることができ,発光特性と合わせて,エピタキシャル膜の品質が大幅に改善できた.(3)格子不整合によるヘテロ接合界面での欠陥密度を下げるためにZnTe活性層の幅を狭くしたZnTe/ZnMgTe量子井戸構造を作製し,評価したところ,各量子井戸層からの発光エネルギーは井戸層の歪を考慮して求めた計算値と良く一致し,更に,適度なMg組成,井戸幅の多重量子井戸構造において,室温発光が得られることを実証した
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