2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22560304
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
犬島 喬 東海大学, 工学部, 教授 (20266381)
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Keywords | InN / 超伝導 / マイスナー効果 / BCS超伝導 / 高温超伝導 / 2種類の電子 |
Research Abstract |
電子濃度(4.8×10^<17>cm^<-3>)を持つMBE成長InNとMOCVD成長InN(7.8×10^<18>cm^<-3>)のマイスナー効果の温度依存性を1.5K~20mKの範囲でフランス・グルノーブルの強磁場研究センター(GHMFL)にて測定した。その結果InNは明確なフェルミ面をもち、かつ2種類の超伝導相転移を示すことが明らかになった。このことはIhNの超伝導に関与する電子が2種類存在することを意味する。すなわち、InNの超伝導はa-b面内の第2近接にある金属Inが作り出すジョセブソン結合型のs-電子が支配的なBCS超伝導のほかに、高温超伝導で観測される、短いコヒーレント長をもつd-電子による超伝導が存在する。このことを確認するため、磁気プラズマ反射測定と、磁気抵抗効果の測定を行って、確かに2種類の電子が存在することを確認した。この2種類の電子の存在確率は温度とともに変化し、超伝導相転移より低温ではほぼ高温超伝導で観測されるd-電子のみになることを見出した。このd-電子による超伝導は磁気侵入長が長く、揺らぎによって容易に磁束格子の融解を生ずる。 第一原理計算から、InNの価電子帯にはs-d混成があり、結果として伝導帯には2種類の電子が発生すると結論付けた。今回の研究により、InNは禁止帯幅0.64eVの直接遷移型半導体であり、青色発光素子の重要な素材でもあるが、その電子構造にはd-電子の寄与があり、高温超伝導タイプの超伝導を示すことが分かった。今後この特異な電子構造を利用した電子デバイスへの応用が期待される、
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モット転移近傍の1立方センチメートルあたり10の17乗台の電子濃度を持つ半導体が超伝導を示す報告は未だ成されたことがないが、今回ナイトライド半導体InNにおいて、この超伝導が高温超電導体と同じd-電子によって達成されていることを見出すことが出来た。これは当初期待していたとおりの結果であり、ほぼ予測に沿った成果になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究成果により、InNの超伝導にはd-電子が重要な働きをしていることが分かった。今後このd-電子の超伝導への寄与を明確にするには磁性不純物をドープしたInNの超伝導を計測することが最重要課題となる。 半導体でs-d電子の混成効果が超伝導として観測されたのは初めてである。この効果はInNに限られるものではなく、他の半導体、特に酸化物半導体、透明電極用半導体の電子構造にも繋がる成果であり、今後この方面への研究に積極的に進展させて行く。
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Research Products
(2 results)