2011 Fiscal Year Annual Research Report
高速大容量無線通信システム用超広帯域(UWB)マイクロ波フィルタの研究開発
Project/Area Number |
22560320
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
馬 哲旺 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (40282909)
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Keywords | 無線通信 / マイクロ波 / 超広帯域フィルタ / マイクロストリップ線路 / マルチモード共振器 / パラレル結合伝送線路共振器 / リング共振器 / フィルタの合成理論 |
Research Abstract |
本年度では、主に以下4種類の構造を用いて、超広帯域(UWB)帯域通過フィルタ(BPF)の合成理論と設計手法を開発し、複数の小形で低損失な広帯域BPFの設計を行った。 (1)スロット装荷パラレル結合マイクロストリップ線路で構成された新しい3モード共振器構造:この共振器のモード解析を行ったうえで、並列共振器で構成したフィルタ等価回路を用いた設計手法を提案した。設計したフィルタは小形で、広い通過域と複数の減衰極による急峻な周波数選択特性を持つ。 (2)短絡または開放スタブを装荷したマルチモード共振器を用いた構造:共振器の各モードの特性を調べ、各モードをそれぞれ独立に制御するパラメータを見つけた。この種の共振器のみを用いて、多段のフィルタの設計を行う際に、通過域内の特性の調整が困難であったものの、直線形半波長共振器など、他の種類の共振器と組み合わせて設計した多段の広帯域フィルタは、低損失と極めて急峻なスカート特性を示した。 (3)パラレル結合伝送線路共振器フィルタ:この種のフィルタに対し提案した新しい設計法を検証するために、フィルタの試作および測定評価を行い、所望の特性を得た。また、従来の設計法によるフィルタの特性と比べ、本設計法によるフィルタの特性の改善は非常に顕著であることも明らかにした。 (4)マイクロストリップタブ結合リング共振器を用いた構造:この種の共振器に対して、これまでに阻止域内における減衰極周波数の計算公式があったものの、フィルタの設計上より重要な通過域内の反射ゼロ点周波数および3dB通過域幅に関する設計公式がなかったため、本研究では伝送線路等価回路に対し、偶-奇モード解析を行い、必要な設計公式を導くことにより、この種の共振器を利用した広帯域フィルタの設計手法を確立した。 その他、UWB帯域通過フィルタの阻止域特性を改善するために、マイクロストリップヘアピン形共振器を用いた小形低域通過フィルタの設計手法を確立し、理論予測通りの特性を実現できた。また、小形多層SIWデュアルモード共振器を利用した準ミリ波帯広帯域BPFの設計も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究実施計画をおおむね実現できた。マルチモード共振器やリング共振器を用いた4種類のUWBフィルタの設計を行い、それぞれの構造と特性を検討した。ただし、一部の構造を用いて設計したUWBフィルタについて、来年度引き続き実験検証を行う必要がある。その理由として、自分の研究室では回路製作精度の制限で、設計したフィルタには試作ができなかったものもあった。来年度は、フィルタを協力会社に試作してもらった後、自分の研究室でその特性を測定評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)これまでに提案および設計した各種のUWBフィルタに対し、構造から特性関数まで詳細な比較検討を行い、各種の構造に適用できる統一的な設計手法を構築する。この理論をもとに、米国連邦通信委員会(FCC)の規定を満たす小形で、特性の優れたUWBフィルタを実現する。 (2)リング共振器を用いた構造および短絡または開放スタブを装荷したマルチモード共振器を用いて、日本のLow-Band用のUWBフィルタとHigh-Band用のUWBフィルタをそれぞれ設計し、試作と特性の測定評価を行う。
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Research Products
(13 results)