2011 Fiscal Year Annual Research Report
タイミング調整機構を持つ次世代データパス回路の遅延変動耐性と最適合成
Project/Area Number |
22560326
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
金子 峰雄 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (00185935)
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Keywords | 集積回路 / 製造ばらつき / タイミングばらつき / タイミング・スキュー / 高位合成 / タイミングテスト / PDE / 製造後チューニング |
Research Abstract |
本研究は,極微細集積回路において,製造ばらつきに起因する動作タイミング誤りを解消し,チップ個別・固有の性能を最大限に引き出す『製造後タイミングスキュー調整(Post Silicon Skew Tuning : PSST)』が効果的に機能するためのデータパス回路の特徴解明と最適合成手法の確立を目指すものである.この目的に対して本年度の成果は大きく次の2点にまとめられる. 1.PSSTのための高位合成 PSSTにおいて,実装すべき計算プログラム中の全ての演算がタイミング的に正しく実行できるタイミングスキュー調整量が存在することが,スキュー制約グラフ(辺重み付き有向グラフ)が正サイクルを持たない事と等価であることから,スキュー制約グラフが『正サイクルを持つ確率:PPC)』を最小化する高位合成を目指す.特に今年度においては,PPCを解析的に求める事の困難さから,モンテカルロシミュレーションに基づくPPC数値解析を利用し,暫定解を逐次改善する発見的合成手法を提案した.前年度において同目的のために提案した順序彩色に基づく手法との比較実験では,より正確な評価値(モンテカルロシミュレーションから得られる)に基づくことの重要性が確認された.その一方で暫定解の逐次改善の最適化アルゴリズムとしての限界から,必ずしも常に最善の解を生成するとは限らないことも明らかとなった. 2.PSSTのためのPDE調整アルゴリズム 実際のPSSTの適用には,製造後の個別チップに対するスキュー調整を行う手続を設計する必要がある.今年度はセットアップ・タイミング・テストとホールド・タイミング・テストを組織的に繰り返して調整量を確定する手法を提案した.同提案は,世界で初めての有限ステップ停止性を備えたスキュー調整アルゴリズムである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PSSTのための高位合成,製造後調整プロセスについて,ほぼ当初計画した通りに研究・開発が進んでいるが,PPCの解析的評価手法は未だに未解決であり,提案した合成手法は代替評価に基づく最適化,あるいはシミュレーション評価を組み入れ易い発見的最適化に頼るものとなっており,その完成度の意味では改善の余地が残るものとなっている.
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Strategy for Future Research Activity |
1.タイミングスキュー調整性に優れたデータパス回路の合成手法の開発:初年度および本年度において,代替評価を用いたILP(整数線形計画)解法とモンテカルロシミュレーションに基づく厳密評価を用いた発見的解法を提案したが,代替評価あるいは発見的手法の能力に起因して,いずれも十分な性能が得られていない.最終年度では,より優れた代替評価と大域的良好解探索能力がより高い発見的手法の開発を目指す. 2.チップ製造後のPDE調整アルゴリズムの開発:本年度において,セットアップタイミングテストとホールドタイミングテストを利用する基本法式を開発・提案したが,最終年度においてこれを更に拡張し,動作時の特性変動を考慮してタイミングマージンを最大化するPDE調整手法を確立する.
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