2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケールデバイスの過渡的電気・熱連成シミュレーション技術の開発とその応用
Project/Area Number |
22560330
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鎌倉 良成 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (70294022)
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Keywords | フォノン / 電子 / シミュレーション / モンテカルロ法 / 熱伝導 / トランジスタ / MOSFET / 熱電 |
Research Abstract |
ナノスケールの極めて微細な電子デバイス中の発熱と熱伝導を、原理的な物理メカニズムに基づいて高精度に解析するためのシミュレータを開発した。厚さ1ミクロン以下のシリコン薄膜において、熱伝導率が低下することが実験的に知られているが、今回、その傾向(膜厚依存性および温度依存性)をシミュレーションで良好に再現することができた。我々のシミュレータでは、モンテカルロ法を用いて、フォノンに対するボルツマン輸送方程式を数値的に解く。これまで他機関より報告されているフォノンーフォノン散乱の取り込みに加え、(1)現実的なバンド計算の結果から抽出した現実的なフォノン分散曲線のデータをシミュレータに反映する、(2)薄膜界面においてフォノンは拡散的に反射されるものと仮定しランバート余弦則に従って散乱角分布を決定する、といった物理モデルを今回新たに追加したところ、これらを考慮することが実験値の再現に対して本質的に重要であることがわかった。また、本シミュレータのさらなる応用として、シリコンナノワイヤの熱伝導率の解析も行った。その結果、直径の大きなナノワイヤでは良好な実験結果の再現が得られたものの、数10ナノメートルの領域では、シミュレーション結果が実験値を数倍程度上回ることが分かった。フォノン閉じ込め効果やワイヤ界面の原子乱れ、ひずみなど、今回取り入れていない効果が熱伝導度を低下させている可能性を示唆する結果と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで課題であった薄膜シリコン中の熱伝導シミュレーションの精度が大幅に改善し、実験結果を良好に再現できるようになったことで、今後の実デバイスを想定した応用展開に道が開けた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した電子とフォノンの統合シミュレータを用いた応用解析を本格的に推進する。FinFETや超薄膜SOI-MOSFETを対象として、微細素子中の熱伝導の挙動を詳細に観察するとともに、効率的な熱制御法や、熱電変換の可能性を検討する。
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