2010 Fiscal Year Annual Research Report
ダイヤモンドナノ粒子を用いた高性能電界放射電子源の研究
Project/Area Number |
22560347
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
吉本 智巳 東洋大学, 理工学部, 准教授 (60230819)
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Keywords | 電界放射 / ダイヤモンド / 実効仕事関数 |
Research Abstract |
ダイヤモンド微粒子の鋭く尖った晶へきを利用することにより,低電圧で動作し安定な放射電流が得られる電界放射電子源の実現を目標に研究を進めている.本年度は,ダイヤモンド微粒子の表面状態と電子放射の関係を明らかにするために,基礎的な物性値の一つである放射電子に対する電位障壁高さ(実効仕事関数)を熱電子放射特性から詳しく調べた.ダイヤモンド微粒子では500℃以下の低温でも熱電度放射が確認でき,また,その特性はリチャードソン・ダッシュマンの関係式で記述することができた.ダイヤモンド微粒子の実効仕事関数はおよそ2.OeVであることが分かった.これは通常の金属や半導体の仕事関数と比較すると非常に小さい値である.実効仕事関数が小さいと低い電界でも電子に対する障壁幅が薄くなり,電界放射しやすくなる.したがって,ダイヤモンド微粒子は電界放射電子源の材料として有望であることが明らかになった.また,ダイヤモンド微粒子を超高真空中で熱処理することにより,実効仕事関数が変化することが分かった.この詳細な理由は不明であるが,熱処理により微粒子の表面状態の変化により,実効仕事関数が変わるものと推測できる.特にダイヤモンド微粒子表面での炭素-水素あるいは炭素-酸素結合に起因する表面状態の変化に興味が持たれる.来年度は,熱処理による表面の変化と実効仕事関数の関係を明らかし,電子源の実用化に向けた熱処理あるいは表面処理の方法を見いだして行きたいと考えている.
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