Research Abstract |
今年度の計画に従い,(1)外部構造に関する設計技術,(2)量子計算機を想定した安全性評価,(3)攻撃による安全性検証,三つの項目を実施した.(1)については,内部状態を削減したブロック暗号に基づく圧縮関数の構成法とその定義域拡大に関して網羅的な安全性解析を行った.その結果,安全となる圧縮関数の構成法とそれに応じた定義域拡大を明かにした.内部状態の削減は回路規模の削減を意味するので,本解析により安全と判明した方式は小型電子機器に適した方式である.また,この方式の原像困難性については,使用したブロック暗号の計算量的安全性に帰着できることを示した.理想ブロック暗号へ安全性帰着をする先行研究はあるが,計算量的安全性へ安全性帰着できることを示したのは,本研究が初めてである.(2)については,3ラウンドFeistel構造は,量子計算機を想定した場合,安全でないことが判明した.Feistel構造はハッシュ関数の基本的な構造なので,安全となるラウンド数を明らかにすることが今後の課題である.古典計算機を想定する場合は,3ラウンドFeistel構造は安全であることが知られているので,本研究の成果は,量子計算機が古典計算機よりも計算能力が優れていることを示す例にもなっている.(3)については,ライトウエイトブロック暗号に対して,最新の攻撃法であるcube攻撃に対する安全性について計算機実験を行った.その結果,ライトウエイトブロック暗号のラウンド数を少なくすると,安全でないものがあることがわかった.これの研究成果は未発表であるが,来年度にさらに詳細な検討を行い,それらをまとめて発表する予定である.
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