Research Abstract |
稼動中の原子力発電所や運行中の飛行機などにおいて,稼動・運行と同時に異常状態を実時間で検出することは非常に難しい.この理由は,異常が生じる初期段階では,その予兆現象が変動的で,かつ非定常(現象の再現性が低い)な性質が強いためである.そのため,初期段階の異常検出には,短時間で瞬間的に生じる現象を正確に捉える技術が要求される.本研究ではこの問題に対して,初期段階の非定常な異常信号の発生時刻と強さを高速(5.0×10-7[s]以内),且つ高信頼性(目的信号の検出誤差-20[dB])に検出する手法を開発する.これは研究代表者が考案・開発した寄生的離散ウェーブレット変換と,それによる高速ウェーブレット瞬時相関の各理論を用いて実現できる. 本年度における課題は,前年度改善を行った信頼性向上および実時間処理に向けた高速化技術を統合し,システム統合化を行う事である.これを達成するために,(1)実時間処理対応の実装環境におけるプログラム実装,(2)実応用課題への適用による統合化システムの検証をおこなった. (1)については,研究協力者である企業関係者とともに,従来より実装を行ってきた実装環境(National Instrument社製Lab View)への実装を行うとともに,並行して,C言語,数値解析ソフトウェアMATLAB上において,おのおの高速化処理性能の検証を進めた,この結果,実装環境ごとにばらつきはあるものの,平均15%程度の解析速度向上が確認できた. 一方,(2)についても,研究協力者である企業関係者および医療関係者より,それぞれ,「エンジン燃焼に関わる点火プラグ電流波形」,「胎児心電図」のいずれも実時間信号処理を必要とする解析対象データの提供を受け,提案システムによる解析を試行した.その結果,前者においては,エンジンの燃焼・点火不良を示す信号成分と車体振動などに起因する信号成分とが,同一周波数帯域に存在するため分離が困難であったものを解消し,異常信号分類を達成した.また,後者においても,同様に診断対象である胎児心電図と母体心電図が重畳していたものを,分離・再構成することで,早期医療診断支援に寄与できることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度・二年度とも,当初予定どおりの高速化とシステム化を達成しつつあり,研究計画としては順調である. 一方,最終年度にむけて,提案システムの有効性検証を行うための解析対象データが十分確保できない懸念があるとともに,最終実装にむけた問題点も確認できており,これらの検討が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては,現在稼働中の機器類に対して,直接組み込み・内蔵実装を行える汎用性を高めることが目的となる.これに対しては,2年度に実施した検証により,解析対象の状況・周辺環境に依存した高速化性能の低下などが明らかとなっているため,初年度め高速化手法の更なる改善を行うとともに,本提案システムをより効果的に実装・活用できる実装対象の選定・検証を行うことで,早期のシステム実装・実用化を目指す.
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