2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳波の時空動特性を用いたストレス計測システムの研究
Project/Area Number |
22560420
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西藤 聖二 山口大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (60253168)
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Keywords | ストレス計測 / 脳波リズム / 低域α波 / 匂い応答 / ストレス軽減 / 高域α波 / θ波 |
Research Abstract |
(今年度実施した内容)以下の2点について脳波の応答を計測した。 (1)匂いに対する応答:精油(アロマオイル)の中で、一般的なミント系の香りと、個性的で好き嫌いの分かれる香りのそれぞれに対する応答を調べた。 (2)物理的・精神的ストレスに対する応答および運動による回復効果:音や暗算による物理的・精神的ストレスを加えた後に、運動や休憩をとった時の脳波の回復の様子を調べた。 (結果と意義) (1)ペパーミントにより、高域α波(10~12Hz)の平均振幅が安静時基準で約20%増加した(被験者平均、以下同様)。一方、ヒノキ科の香り(サイプレス)は低域α波(8~10Hz)を約20%低減した。主観的な評価に関しては、前者は被験者16名全員が快い又は不快でないと回答したのに対して、後者は快いと感じる被験者はいなかった。後者は被験者4名とまだデータ量が少ないが、ペパーミントやサイプレスによって得た情動がα波の高域・低域成分の平均振幅の増減に反映される可能性が示された。 (2)低域α波の平均振幅が、不快音(KHz単一音)や暗算、あるいはその組み合わせによって10~25%程度減少した。中でも不快音聴取中の暗算によって、20%以上の振幅減少が観測された。その後、30分程度の長さの休憩または軽負荷のエアロバイク運動を行うと、振幅は回復するめみならず、安静状態よりも20%以上増加することがわかった。休憩よりも運動による振幅の平均値は大きかったが、両者に有意差は認められなかった。また、同様の変化はθ波(4~8Hz)にみられたが、高域α波やβ波(13~30Hz)には表れなかった。これらの結果は、音や暗算といった物理的・精神的ストレスや休憩や運動によるストレス解消効果が低域α波に反映される可能性を示しており、昨年度のストレス計測の結果及び(1)の結果と合わせると、脳波リズムにおけるストレス指標としては、低域α波が有力な候補の一つであると判断できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
達成度は80%程度である。精神ストレス・物理(音)ストレスに対する応答については、休憩や運動のストレス解消効果も含めて、計画以上に進展した。一方、嗅覚・視覚ストレスに対する応答については、匂いに対する脳波の応答について、様々な匂いを用いて試行錯誤を繰り返したため、印加するストレスの選定に時間を要した。これに伴い、視覚ストレスにたいする応答の実験までに至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は健常成入20名程度を対象として、1.脳波のストレス応答のさらなる調査と、2.他のイメージング技術による知見との融合を中心として、下記(1)~(3)について実験・解析を行う予定である。 (1)ストレス応答:匂いストレスに対する応答に加え、視覚ストレスに対する応答も合わせて調査を行う。視覚ストレスとしては、不快感や落ち着きを与える絵画や動画を用いる予定である。時空動特性を中心とした解析を行う。 (2)ストレス軽減の効果:昨年度に引き続き、運動や休憩のストレス解消効果を調べる。 (3)他のイメージング技術による知見との融合:脳波のストレス応答に関するこれまでの知見と、NIRS,fMRI等による知見との融合を試みる。必要に応じて、NIRSを借用して実験・解析を行い、脳波応答と比較・検証することも検討する。 (1)については視覚ストレスの効果が閉眼時の脳波に反映されない可能性がある。その場合は、開眼脳波の利用も考える。
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