2012 Fiscal Year Annual Research Report
動的せん断ひずみ時空間勾配解析によるエバネッセント場の検出に関する研究
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22560421
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
寺本 顕武 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70207489)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 時空間勾配解析 / ガイド波 / 非破壊検査 / 超音波撮像 / 品質評価 / ナノスケール計測 / 超解像 |
Research Abstract |
『時空間勾配解析を動的せん断ひずみの秩序性の解析に導入し, 亀裂近傍のエバネッセント場を検出することにより, 波長の数分の1 の大きさの亀裂を抽出する非破壊検査法を確立すること』を目的として基礎研究を実施した結果, 本年度は以下の成果を達成した. まず,表面変位観測装置を用いて, 薄板材料表面の振動場をサブミクロンオーダーで計測し, 欠損近傍での面外せん断ひずみの振る舞いがどのように変換するか観測し,同時に,薄板材料中に発生した欠損の有限要素モデル化を行った. このモデルを構造解析ソフトウェア中に再構成し, 観測された現象を再現した結果,欠損境界において,エバネッセント場が形成される事が確認された.一方,波動方程式にもとづく解析を実施し, 中空円筒状の欠損が薄板材料中に生じた場合の, A0モードラム波の波動場の厳密解を導出した.厳密解にもとづき, 互いに直交する動的面外せん断歪みの共分散行列の行列式が,欠損近傍のエバネッセント場を抽出することを理論的に明らかにした.上記の行列式を,1で得られた観測結果に適用した結果, 欠損部を映像化することに成功した.さらに, 昨年度において入射ラム波の波長の1/18程度の分解能を有していることが, 実験により確認されていたが,本年度は,1/70まで高性能化することに成功した.このことより,「分解能を決定する要因は, 計測に用いるプローブの空間的大きさである」との予想が概ね正しいのではないかと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では, 本研究は, 大きく次の二つを柱に遂行される. 1. CFRP 中に発生した, 欠損や剥離境界から滲みだすエバネッセント場を計算モデル化し, 提案手法の妥当性を証明する. 2. レーザースキャニングシステムと, 共焦点干渉光学系を製作し, 実対象に対し非破壊検査を実施する それぞれの項目において研究の進捗の妥当性を以下に評価する。 1. 波動方程式にもとづく解析を実施し, 中空円筒状の欠損が薄板材料中に生じた場合の, A0モードラム波の波動場の厳密解を導出した.厳密解にもとづき, 互いに直交する動的面外せん断歪みの共分散行列の行列式が,欠損近傍のエバネッセント場を抽出することを理論的に明らかにした計算モデルを確立した。同時に実験結果より,欠損部を映像化することに成功した.さらに, 昨年度において入射ラム波の波長の1/18程度の分解能を有していることが, 実験により確認されていたが,本年度は,1/70まで高性能化することに成功した. 2. 当初,高速でスキャニングして,隣り合う観測点からの信号の差分により,対象表面の空間勾配を検出しようと考えていたが,研究遂行中に,光学系を工夫する事により,一点およびその近傍における,空間勾配(ベクトル量)を同時にその場で観測できることに至り,現在その光学系にもとづき実験を遂行している.新光学系は,瞬時に着目点の空間勾配を検出できるので,当初の提案システムより,可用性の高い検査系が実現できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 大きく次の二つを柱に遂行する. 1. CFRP 中に発生した, 層間剥離境界から滲みだすエバネッセント場を計算モデル化し, 提案手法の妥当性を証明する. 2. 2次元微分干渉光学系を組み込んだ共焦点光学系を製作し, 実対象に対し非破壊検査を実施する それぞれの項目において方策を以下に記述する. 1. 波動方程式にもとづく解析を実施し, 微小相関剥離欠が積層薄板材料中に生じた場合の, A0モードラム波の波動場の厳密解を導出する.とくに,剥離近傍で発生が予想されるモード変換の仕組みを数値モデルにより明らかにする.また,A0モードラム波に着目すると,剥離領域直上では,等価的に板厚が薄くなるため,位相速度が減少する.そこで剥離領域における位相速度の減少率より,剥離位置の深さ方向の推定を試みる。 2. A0モードラム波が進行する対象表面の動的せん断歪みを,新たに設計した2次元微分干渉光学系によって観測し,動的せん断歪みの分散共分散行列をその場で出力する観測系を実現し,提案する「動的せん断歪み解析法」の有効性を実験により確認する。2次元微分干渉光学系は,偏向を用いて実現している。P偏波により, x方向の傾き, S偏波によりy方向の傾きを検出することにより, 空間勾配ベクトルの観測を可能にしたものである.
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Research Products
(8 results)