Research Abstract |
本研究では,制御対象変動や未知外乱など,制御性能に悪影響を与える要因を高精度で推定し,さらにその結果を制御に反映することにより,制御性能の高性能化を実現することを目的としている.そのため,以下の研究課題の解決を計画している. (A)FDIフィルタ設計理論に基づく未知外乱推定手法の構築 (B)制御系の部分的要素における変動量の動的推定手法の構築 (C)未知外乱/制御要素の部分的変動の高精度推定に基づく制御手法の確立 上記のうち,(A)に関しては,FDIフィルタの設計にも応用されている,SMO (Sliding Mode Observer)に基づく未知外乱手法の構築に取り組み,離散時間ベースの設計方法の理論構築に成功した.さらに,幾つかの対象への応用を試みた.その結果,量子化誤差による悪影響を受ける場合あるため,その対策について検討を行った.その結果について,第12回「運動と振動の制御」シンポジウムで研究発表を行った.さらに,IEEEの論文誌に投稿準備中である.一方,(B)および(C)に関しては,SAC (Simple Adaptive Control)の応用が有効であることを見いだした.しかしながら,SACを機械振動系に適用した場合,反共振周波数の変動が悪影響を及ぼす場合がある.本年度は,その対策として,並列フィードフォワードモデルの設計を工夫した.その結果,昨年度より性能を向上させることができた.さらに,機械振動系実験装置への応用によってその有効性を検証した.その結果は,計測自動制御学会制御部門大会にて研究発表を行った.ただし,そのシステマティックな設計法の構築は課題として残されているため,今後解決方法を検討する.その上で,計測自動制御学会論文誌などへの投稿を予定している.以上より,当初の目的に沿った成果が得られている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目標として設定した3つの課題すべてについて,一定の成果が得られている.(A)FDIフィルタの構築については,計画通りに離散時間系での設計手法を構築し,さらに発展させた成果を得ている.(B)および(C)の計画については,当初の計画とは異なるアプローチとなったが,SAC (Simple Adaptive Control)を活用した手法を構築することができた.その結果,当初の目標である変動系に対する制御方法の確立について,一定の成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
FDIフィルタの構築については,実応用を想定した場合における量子化誤差の影響を低減化した方法としてさらに発展させる.さらに,現状の適用対象が最小位相系に限られていた点を改善するため,並列モデルを併用した新たな方法について検討する.この方法では,設計モデルが見かけ上最小位相系となるように対象モデルを変形して取り扱うアプローチである.一方,SACについては,昨年度までの研究によって機械系反共振点の影響による応答劣化への対策を見いだしたものの,そのシステマティックな設計法の構築が課題として残されている.そこで,H∞制御理論の考え方を活用した設計理論として構築することを目標に発展的な検討を行う.
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