Research Abstract |
世界的にCO_2の削減が急務な課題であり,その削減策の一つとして,わが国では,CO_2の地中固定を検討しているが,地中固定をするに当たって,注入口となる坑道(立坑)を掘削しなければならない.掘削の対象となるのは,主として岩盤であることから,その変形および透水挙動に関して研究が進められている.軟質な地盤と異なり,岩盤の場合,その変形および透水特性は,岩盤に包含される不連続面に支配されることが知られている.特に,掘削過程において応力は複雑に変化し,例えば,トンネル掘削後はトンネルの放射方向の応力が解放され,逆に,周方向の応力が卓越するという偏差的な状態になる.こうした複雑な応力下において,不連続面の変形が進み,同時に周辺岩盤の透水性が増大する可能性がある.また,応力が定常状態になった後でも,クリープ変形などを生じる可能性もある.そこで本研究では,変形試験と透水試験を同時に行うことのできる独自の試験機を用いて,応力変化をともなう透水-変形連成試験を実施し,各種特性について考察することを目的とした. 対象となるのが岩盤であることから,試験供試体としては,無論,天然供試体が望ましいが,天然供試体については入手が困難であることに加え,非均質性に富んでいることから,試験結果にバラツキが生ずるほか,その原因の同定も難しい.そこで,こうしたことを排除すべく,本研究では人工供試体を用いて試験を実施することとした.昨年度は,既往の研究を参考に石膏を主体とした供試体を用いたが,石膏の溶解などが著しかったことから,今年度はモルタルをベースとした供試体を用いて,多数の透水-変形連成試験を実施した. 実験では,不連続面を挿入したものも用い,主として,不連続面の変形にともなう透水挙動の変化に着目した.その結果,木連続面の変形によって,供試体の巨視的な透水性は大きく変化することが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度に,トンネルなどの掘削を考慮した他段階の応力変化を吟味し,研究を総括することを目指しているが,それに関わる基礎的な実験は,昨年度および今年度で終了していることから,上記のような判断をしている.
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Strategy for Future Research Activity |
概ね順調に進んでいることから,今後は,予定通り,空洞掘削を念頭においた複雑な応力下における不連続面の変形と,それを包含する材料の巨視的な変形について考察すると同時に,実際には把握が難しい不連続面の変形,すなわち,局所的な材料の変形について,画像解析を駆使して捉えていくことを考えている.研究計画の変更は特にないが,一昨年度の課題であった,石膏供試体における石膏成分の溶解という事象は,供試体をモルタルに変更することでクリアされており,現時点では,特に大きな問題点あるいは課題点は存在しない.
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