Research Abstract |
平成22年度には,まず,狭隘な施工環境にも適用可能なプレストレス導入装置の開発を行った.CFRP板には,実構造物の補修・補強工法で多用される汎用品(高強度タイプ,幅50mm,厚さ1.2mm)を用いた.CFRP板にプレテンションを導入するための専用治具を製作し,板厚9mm,幅50mmの平鋼板に対して,その導入量をパラメータとして実験的に検討を行った.その結果,安全かつ簡便に,平鋼板に圧縮応力を導入できることが確かめられた.また,引張試験結果からは,導入量の増大にともなって引張強度が低下するものの,平鋼板には最大で80MPaの圧縮応力が導入できることを確認した.一方,プレストレス量の時間依存性については,室温で約1ヶ月間,計測して検討した結果,その低下はほとんどないことが確かめられた.さらに,CFRP板接着による疲労き裂補修の設計法の構築に向けて,これまでに得られた疲労試験結果を参照して,疲労寿命の推定を試みた.面外ガセット溶接止端部から発生した疲労き裂に対して,スリット加工して接着補修された積層CFRP板等を忠実にFEM解析モデルで再現し,線形破壊力学に基づいた検討,および,パリス則に基づいたき裂伝播解析を行った.その結果,CFRP板の接着位置やその積層化が,き裂先端の応力拡大係数の低減効果に及ぼす影響を定量的に示すことができた.また,積層数を5層とした場合には,積層CFRP板の負担する応力が実験値に比べて低くなり,その算定に課題が残されたものの,疲労寿命の推定結果からは,実験結果を,実用上十分な精度で,安全側に評価できることが確かめられた
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