Research Abstract |
平成23年度には,はじめに,主に2つの観点から前年度に開発したプレストレス導入装置の改良を行った.まず,小型油圧システムを新規に導入することで,CFRP板へのプレテンションの導入作業を安全かつ確実に行うことができるようになるとともに,作業効率を飛躍的に向上させることができた.また,プレストレス導入装置からCFRP板を簡便に脱着できるシステムを新たに開発した.これにより,プレストレス導入時に問題となっていた,接着端のはく離抵抗強度の低下についても,大幅に改善されることが確かめられた.これらのプレストレス導入装置の改良により,実構造における狭隘部への接着補修にも十分対応できるものと考えられる. 次に,CFRP板接着による疲労き裂補修の設計法の構築に向けて,動的な繰返し荷重の作用下でCFRP板を接着し,その接着特性,および,養生中,硬化後の疲労き裂の進展挙動を検討した.さらに,FEM解析プログラムを用いて応力拡大係数を求め,線形破壊力学に基づいたき裂進展解析を実施して,補修後の疲労き裂の進展を実験結果と比較するとともに,公称応力の低減を考慮した評価式から算出される応力拡大係数および疲労寿命との対比から,公称応力の低減効果と架橋効果の定量的な評価を試みた.その結果,疲労き裂は,接着の直後から硬化が完了するまで,わずかに進展するものの,硬化時間は数時間であり,供用下における実働荷重を踏まえると,実用上は問題ないといえた.また,架橋効果は,公称応力の低減効果と比べると小さく,今回の検討の範囲では,応力拡大係数の低減率では5~10%程度であることなどが確かめられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災の影響に伴う実験設備の安全性および電力抑制の観点から,疲労試験など,継続時間が長い実験については,一定期間(平成23年4月~9月),休止していたため,研究の進捗にやや遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の理由により,実験的な検討にやや遅れがみられることから,最終的な目標が達成できるように,試験片の寸法や補修対象とするき裂モデルの見直しを行って,実験の効率化を図るとともに,これまでの疲労試験データの再整理を含め,解析的な検討を併用しながら,研究開発を推進していく予定である.
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