2012 Fiscal Year Annual Research Report
画像解析によるモードIIき裂の不安定成長の実験的検証と数値解析手法の確立
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22560489
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
沖中 知雄 近畿大学, 理工学部, 准教授 (90298985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹原 幸生 近畿大学, 理工学部, 教授 (50216933)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 画像計測 / 不安定成長 / X-FEM |
Research Abstract |
本年度の研究では,解析と実験の双方を行った.各々の実施状況は以下の通りである: [実験の実施状況]本年度は熱可塑性をもつ材料であるパラフィンワックスを用いて20mm×10mm×0.2mmの薄板を作成した.供試体型枠中央部に載荷軸と45度の角度をもつように薄板を固定し.型枠にエポキシ樹脂を流し込む.樹脂硬化後に加熱処理によってパラフィンワックスを除去することにより,中央部にき裂をもつ50mm×50mm×10mmの矩形供試体を作成した.作成された供試体を用い一軸圧縮試験を行った.供試体中の応力場は光弾性実験装置を用いて供試体中の応力場を干渉縞として可視化され,き裂の進展状況とそれに伴う応力分布の変化を超高速ビデオカメラを用いて画像計測した.その結果,き裂の進展は初期き裂の方端から発生し,両端から同時にき裂の成長が開始する例は観測されなかった.先行き裂の進展開始に伴って解放される応力が応力波として供試体内部を伝播するが,伝播した応力波が供試体表面で反射し,初期き裂のもう一方の端部に到達する.この応力波により,もう一方の端部からもき裂の進展が開始することが確認された.衝撃破壊試験等でみられるように,供試体中を伝播する応力波がき裂の進展挙動に大きな影響を与えることは知られているが,本年度の研究により複数のき裂が成長する状況ではき裂の進展により解放される応力波が他のき裂の進展挙動に影響を与えていることが確認された. [解析の実施状況]本研究では2次元解析にはX-FEM,三次元解析にはPDS-FEMを用いて解析を行う予定である.本年度は先ず予備実験として,厚さ0.05mmのき裂をもつ供試体の圧縮試験を行い,内部の応力状況を干渉縞として可視化した.実験結果と解析結果の比較から,圧縮荷重下でのき裂周りの応力分布を再現できる解析手法の構築を試みた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題を達成するための実験的課題として,(1)中心部に亀裂をもつ矩形供試体の作成 (2)き裂の進展状況と進展に伴う応力場の変化を可視化し,記録する実験装置の2点が必要である.本年迄の研究において,(1)の供試体の作成についてはパラフィンワックスを用いることにより,中央部に亀裂をもつ供試体の作成に成功している.(2)については,光弾性実験装置と毎秒100万枚撮影可能な超高速ビデオカメラを組み合わせた動的光弾性装置を開発している.この実験装置に残された課題は,超高速ビデオカメラと亀裂の成長開始の同期装置(トリガー)の開発である.本年度まで,導電性塗料を用いた遮断トリガー,対象の輝度の変化を検出する輝度トリガーを開発し,毎秒25万枚での高速撮影には成功しているが毎秒100万枚の撮影速度での撮影には成功していない.これは圧縮荷重下で進展するき裂の開口量が小さく,またき裂の進展に伴う応力分布の変化が限定的であるため,開発された2つのトリガーが十分に機能しないためである.本研究で採用している供試体の作成材料であるエポキシ樹脂中ではP波の伝播速度は約700m/秒であり,き裂の進展速度もこれに準ずるため,詳細な検討のためには毎秒100万枚の撮影速度を実現できるトリガーの開発が今後の課題となる. 数値解析のための解析手法として,X-FEM並びにPDS-FEMを検討している.数値計算のコストから,2次元解析にはX-FEMが,3次元解析にはPDS-FEMが適していると判断している.本年度はキャリブレーションのための静的な実験を行い,不連続面をもつ連続体の圧縮荷重下での応力分布の再現性について検討を加えている.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の研究方針を実験と解析の面から検討する.実験としては来年度,先ずレーザーを利用した遮断トリガーの開発を目指す.進展を開始するき裂の予想進路上に,新たに生成されるき裂面を横断するようにレーザーを照射する.逆サイドには受光装置を設置し,受光するレーザーの強度をモニタリングする.き裂面が生成されて照射されているレーザーを横断するとレーザーの透過率が変化するため,受光装置で受光するレーザーの強度が低下する.この低下を検出し,超高速ビデオカメラに撮影停止信号を送信する装置を開発する.反応速度を20秒以下とすることにより,毎秒100万枚の撮影に対応できるトリガーを作成することができる.開発されたトリガーを用いて動的光弾性実験装置を完成させ,き裂の進展とそれに伴う応力分布の変化を毎秒100万枚の時間分解能で画像計測する. 得られた実験結果を数値解析により検証する.X-FEMを動的問題に拡張し,圧縮荷重下でのき裂進展問題の解析を行う.構築されたモデルの精度は実験結果との比較により検証する.数値解析により再現された干渉縞と実験により計測された干渉縞を比較することにより,供試体中の応力分布の再現性を検証することができる.また,3次元解析においてもPDS-FEMを用いて同様の解析を行う.本研究の課題の範囲では3次元解析は必ずしも必要ないが,将来的に研究成果を3次元における内部き裂の進展問題に拡張する際に利用できる,貴重な知見を得ることが期待できる.
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