2011 Fiscal Year Annual Research Report
凍結試験により細粒土の環境地盤工学的諸特性を評価する方法
Project/Area Number |
22560501
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
伊藤 譲 摂南大学, 理工学部, 教授 (30281752)
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Keywords | 凍結試験 / 細粒土 / 透水係数 / 一軸圧縮強さ / 凍結間隙比 / 未凍結間隙比 / 自由水 / 吸着水 |
Research Abstract |
汚染土壌の浄化や建設汚泥の有効利用などの環境地盤工学的諸問題の対策には,細粒土の特性を把握することが前提であり,その目的に応じた土質試験が行われている.研究代表者は既往の研究において,土の氷点温度や氷点下で凍結する間隙水の状態は土粒子に対する間隙水の吸着の強さを表すのではないかとの着想を得ている.本研究は,この着想を基に凍結試験から細粒土の水理学的・力学的挙動を間隙水の吸着の強さの指標として簡単に求める方法を提案するものである,本年度は,飽和細粒土の一軸圧縮試験や圧密試験から得られる地盤定数との関係を調べた.また,昨年度までに実施してきた透水係数に関する実験データの分析を行った.その主な知見は以下に示すとおりである. (1)昨年度までの研究において,細粒土の透水係数kを支配するのは間隙比eではなく,自由水を示す凍結間隙比e_<f2(-1℃>)であることが明らかとなった.今年度,一連の実験結果を分析したところ,吸着水を示す未凍結間隙比e_<u1(-1℃)>は,本研究で用いた圧密圧力の範囲では圧力の大小に関わらず一定量が保持されることから,e_<u1(-1℃)>で代表される吸着水は土の透水性には影響を与えていないことが示唆されている. (2)一軸圧縮強さquに関しては,間隙比eに対して凍結間隙比e_<f1(-1℃)>の影響はほぼ等しく,これは-1℃までに凍結する水分がquに敏感に影響を及ぼしていることを示唆している. (3)これに対して,未凍結間隙比e_<u(-1℃)>と一軸圧縮強さquの関係から,土粒子の周囲にはほぼ一定の厚さの吸着水が存在して,本研究で用いた圧密圧力の範囲では排水されることなく,圧縮力を受けた場合にも土粒子とほぼ一体化して挙動して,一軸圧縮強さには影響を与えない. (4)従来,土の一軸圧縮強さは含水比や間隙比に支配されているとされてきたが,厳密には自由水としての間隙水に支配されていることが明らかとなった.吸着水は強度には影響を与えていないと思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である透水係数の予測式の提案については,予測式自体は開発途上であるが,未凍結間隙比という新たな指標で評価することで新しい知見が得られた.次に,力学定数との関係については,一軸圧縮強さとの関係において当初の予測とは異なる興味深い結果が得られている.したがって,(2)おおむね順調に進展していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題については,実験解析としては圧密試験について実施中である.当初計画の実験とデータ解析については,平成24年度中に予定通り完了予定である.今年度の課題については,(1)凍結試験と圧密定数との関係を明らかにする,(2)当初予定の透水係数の予測式を提案する,(3)今回の一連の研究で明らかとなった飽和粘性土の工学的性質に関する知見をまとめる.
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