2011 Fiscal Year Annual Research Report
マテリアルフロー分析を組み込んだ栄養塩管理方策の評価手法の開発
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22560549
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
荒巻 俊也 東洋大学, 国際地域学部, 教授 (90282673)
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Keywords | マテリアルフロー分析 / 栄養塩 / 窒素 / 食糧生産 / 食糧消費 / 流域 / チャオプラヤ川 |
Research Abstract |
公共用水域の水質改善にむけてさまざまな取り組みが行われてきたが、湖沼や内湾などの閉鎖性水域では環境基準の達成率は依然低い状況にあり、その原因となる栄養塩(窒素、リン)に対しての更なる対策が必要な状況である。対策による効果や影響を事前に評価するために、集水域からの汚濁負荷を推定し、閉鎖性水域における水質シミュレーションを実施する必要がある。しかしこれまでの水質シミュレーションでは、そもそも社会全体として栄養塩の環境への排出をできるだけ小さくするような対策は考慮できない。このような対策や社会経済の変化による影響を評価するためには、流域全体の栄養塩のフローを解析し、さまざまな対策を実施した結果そのフローが変化したことにより、どのように水系への排出汚濁負荷が変化するのかを推定する必要がある。マテリアルフロー分析(以下、MFA)は、地域スケールでの栄養塩を対象とした解析にも利用されているが、個々のフローの推計精度が十分とは言えず、特に栄養塩の発生源として重要と考えられる農地のマテリアルフローの解析に課題を残していた。 そこで、タイ国チャオプラヤ川下流域において農業、畜産業や水産業(養殖)における食品の生産およびその消費に伴う窒素のMFAを実施した。今年度は昨年までに開発したマテリアルフローモデルについて、食品製造業などの構成要素を加え、チャオプラヤ流域内での小流域ごとの窒素負荷の排出特性について考察を行った。さらに将来シナリオとして、生活排水を下水道で処理する下水処理普及シナリオと、畜産排水や養殖場の排水の農地還元を行う窒素再利用シナリオを設定し、これらのシナリオにより流域の窒素フローがどのように変化するかについて考察を行った。その結果、両方のシナリオを組み合わせたケースで、流域からの水系への窒素負荷が30%程度削減されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素のマテリアルフローモデルの構築とタイ国チャオプラヤ川の適用については、当初の計画以上の早さで進展しているものの、窒素の形態別の解析については基本となる形態別の排出量等のデータの入手がうまくいっておらず、難航している。このようなことから(2)と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
窒素のマテリアルフローモデルの構築は終わり、これをどのように栄養塩管理のための手法として利用できるかを示すことについて今後進めていく予定である。一方で、窒素の形態別の解析については、11.に理由を記載しているが、モデル中にどのように取り組んでいくかを見直しを行い、マテリアルフローモデル中で形態別に考慮することが重要なフローを示すようにする予定である。
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