2011 Fiscal Year Annual Research Report
非線形動的相互作用の観点から見た大加速度を受ける建築物の被災メカニズムの解明
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22560554
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
三辻 和弥 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (90292250)
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Keywords | 建築構造・材料 / 地震工学 / 防災 / 減災 / 耐震 |
Research Abstract |
直接基礎によるRC造4階建て建物で常時微動観測を行ったほか、2011年東北地方太平洋沖地震による建物被害調査を導して、被災した建物における動的相互作用を考慮した観測を実施した。直接基礎によるRC造4階建て建物の結果からは、観測対象が硬質地盤上に建つ上部構造の固有周期0.4秒程度の建物であり、動的相互作用の影響はほとんど見られなかった。 仙台市内において地震によって傾斜した杭基礎建物(14階建てSRC造)で地震被害調査を行い、常時微動観測を実施した。建物傾斜の様子から、上部構造を支える杭基礎の杭頭部が損傷していることが想像される。観測結果からは、建物短辺方向にロッキング振動が卓越していること、ねじれ振動が励起されていることが確認された。また、この建物は固有周期が1秒付近にあり、同時に実施した地盤での観測結果から、敷地地盤の卓越周期とも近いことがわかった。1978年宮城県沖地震でも杭頭部が損傷していたことが知られており、今後、地盤や杭基礎周辺の詳細な調査が行われる前の予備情報として貴重なデータを得た。また、電源が確保できた2012年4月より、地震観測装置を設置している。解体工事の状況に合わせて2012年夏ごろまで余震観測を実施する計画である。周辺の観測記録と比較して、本震時の振動をある程度、再現できる可能性がある。 このほかに、山形県内の建物において地震観測を開始した。 前年度から引き続、建物-杭基礎-地盤連成系地震応答解析プログラムの整理、開発を行っている。現在、地下室を考慮したモデル、非線形解析への拡張を行っており、上記、観測結果をシミュレートする予定である。これらの調査、観測、数値解析結果を通して非線形動的相互作用を含んだ、軟弱地盤上に建つ杭基礎建物の地震被害メカニズムを検討できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年東北地方太平洋沖地震で被災した杭基礎建物において常時微動観測、地震観測を実施しており、非線形動的相互作用と地震被害の関係について貴重なデータを得ている。ほかに、観測結果をシミュレートするための解析プログラムの開発も進んでいる。データ量が多いため観測結果の分析に時間を要しているが、全体的にはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年東北地方太平洋沖地震で被災した杭基礎建物においては最終年度にも引き続き観測を継続する。余震観測記録が蓄積されているので、地震観測記録の分析、本震時の挙動の再現などを検討する。また、仙台市内のほかの被害建物において常時微動観測を実施する予定である。新たな観測対象の建物では、杭基礎建物の動的相互作用の影響を考慮した地盤ばね、減衰特性の評価を行う。さらに、建物-杭基礎-地盤連成系地震応答解析プログラムを完成させ、非線形動的相互作用を考慮した建物の被災メカニズムを、被害調査、常時微動および地震観測、数値解析を通して検討する。2011年東北地方太平洋沖地震の発生により、実際に被災した建物調査に多くの時間と労力を割いているため、実在建物の貴重なデータを入手できている一方で、当初の予定では小型振動台を用いた振動実験を行う予定であったが、これについては今回の計画から割愛することも検討している。
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Research Products
(7 results)