Research Abstract |
本研究は,環境負荷削減のための建築構造分野における対応として,人工造林の有効利用のための木材供給システムの提案,炭素固定源となる木質材料と鋼材のハイブリッド化による構造部材を開発することを目的としている。本年度においては,ハイブリッドによる構造部材の例として鋼と木質材料の複合部材の技術開発にあたって,まず,木質材料の対象となる木材(人工林スギ)に焦点をあてて炭素固定に関する調査を行った。次に,鋼と木質材料の接合方法として,ボルト接合,接着接合,それらの組み合わせをパラメータとした接合法の要素実験を行い,それらの力学的特性の基本的な検討を行った。さらに,鋼と木質材料のハイブリッド構造を使用したビル構造物のモデル設計を行った。得られた内容は下記の通りである。 木材の炭素固定においては, 1)全国の人工林スギによる二酸化炭素の吸収量は,概ね3齢級でピークになり,以降徐々に減少した後,11齢級で約50%になる。中でも,九州地方は他のブロックと比べて,11齢級以降の人工林スギが多いこと,また,森林面積に対する蓄積も大きいため,間伐の対象となると考えられる。 接合部の要素実験においては, 2)接合法の破壊形式は,接着剤の凝集破壊,鋼または木質材料と接着剤の界面破壊,ボルトによる木質材料の押し抜きせん断破壊に分類できる。 3)ボルト接合,接着接合を併用した接合法では,初期の段階で接着剤近傍の破壊後,ボルトによる木質材料の押し抜きせん断破壊となる。 ビル構造物のモデル設計においては, 4)ラーメン構造(鋼構造),複合構造において,部材の見付面積の大きさがほぼ等しい条件のもとでは各対象モデルの重量は概ね同じである。
|