2011 Fiscal Year Annual Research Report
産業副産物を結合材としたグリーンコンクリートにおける自己養生機能の付与と評価
Project/Area Number |
22560572
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
今本 啓一 東京理科大学, 工学部, 准教授 (60337300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兼松 学 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (00312976)
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Keywords | 高炉スラグ / フライアッシュ / 廃石膏ボード / 収縮 / 強度発現 / 竹 |
Research Abstract |
低炭素型社会への変革が求められている中で,建築・土木分野の主たる構造材料であるセメントが,その製造過程において1tonあたり約800kgの二酸化炭素を排出する事実は重い。本研究は,このセメントに代わるものとして,産業副産物であるフライアッシュ(F)および高炉スラグ微粉末(S)に加え,今後益々その排出量の増大が予想される廃石こうボード微粉末(G)を結合材料として用いたグリーンコンクリート(F-S-Gコンクリート)を対象に検討するものであり,このグリーンコンクリートへの自己養生機能の付与するための材料選定と調合設計手法を提案し,新しい素材による補強効果を構造部材レベルで評価するものである。 すなわち, ・自己養生機能の付与方法の効果の確認 高炉スラグやフライアッシュを混和材として用いる場合に水分の適切な供給(養生)が重要であることは古くから指摘されている。この高炉スラグやフライアッシュそのものを主たる結合材として利用する場合,硬化体への水分の供給の重要性はさらに増すものと考えられる。この課題を解決するために,高強度コンクリートの分野において,主として海外で精力的に研究された多孔質骨材や吸水性ポリマーなどによる内部養生効果の適用性を,本F-S-Gコンクリートにおいて検討し,自己養生機能の付与手法を提案する。 ・F-S-Gコンクリートに適用する補強筋が具備すべき特性と構造部材としての挙動 本研究で検討するF-S-Gコンクリートは,セメントのような強アルカリを保持しない。したがって,構造部材として従来一般に用いられている鉄筋はその使用の前提条件が崩れることになり,新たな補強筋を模索する必要がある。本研究ではまず,補強筋としてだけでなく,水分供給効果を有する「竹」の可能性について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) 充分なる湿潤養生効果をもたらすことを意図した高炉スラグ骨材および再生骨材を使用したCCCは,普通骨材を用いた場合と同等の強度発現を示した。 2) 高炉スラグ骨材界面において結合材との反応生成物を確認することができ,複合硬化体において連続体を形成していることが示唆された。 3) 高炉スラグ骨材を用いることにより,自己収縮ひずみを適切に低減できることが示された。 4)補強筋として竹を用いた新しい構造部材(Concrete filled bamboo)を提案し,この構造特性を定量的に把握した。鉄筋代替材料として十分な利用可能性を持つことを確認した。 以上より,概ね研究目的を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,産業副産物である高炉スラグ微粉末およびフライアッシュに加え,今後益々その排出量の増大が予想される廃石こうボード微粉末を用いた系をセメント代替材料として検討している。これまでセメントの混和材として用いられてきた高炉スラグ微粉末やフライアッシュを,全面的に使用することによって顕在化する養生方法や補強筋の問題点を解決するための手法を検討することは,この種の材料の実用化を図る上で必須の事項であり,独創的で学術的な特色と有用性をもつと考える。 低炭素型社会に向けた変革の中で,セメント代替材料を今後検討してゆかざるを得ない状況ある。構造材料はこれまで,その高性能化を志向して技術的な発展がなされてきた。高層建物を志向した高強度コンクリートの開発はその典型ともいえる。しかし,本研究を実施することにより,従来の鉄筋コンクリート部材とは異なる,次の世代に向けた新たな構造部材としてのあり方を見出すことができるものと考える。すなわち,本研究は,「高性能・高強度」といったこれまでの構造材料の評価軸に加え,新たに「環境」としての評価軸の確立に資するものと考える。本評価軸によって創出された材料は,将来的には,火力発電所の特に多い中国やインドなどへの環境対策にも貢献できると考える。 この成果を論文として取りまとめて積極的な情報発信を行う。
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Research Products
(1 results)