2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代の城址における文化的景観の保全、創出、破壊の思想
Project/Area Number |
22560597
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野中 勝利 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (40302400)
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Keywords | 城下町都市 / 城址 / 文化的景観 / 天守閣 / 近代化 |
Research Abstract |
本研究は、わが国固有の都市基盤でる近世城下町を起源とる下町都市の明治以降の都市づくりを文脈的に解釈するものであり、特に「城」に注目し、明治以降の「城址」を取り巻く動きを多面的かつ相対的に捉え、同時代的な城址の文化的景観の意味づけを行う。本年度では、戦前に建設された模擬天守閣について、その建設経緯と意義を分析した。具体的には、戦国期城郭の城址に建設された岐阜、洲本、羽衣石の事例と近世城郭の城址に建設された郡上八幡と伊賀上野の事例である。岐阜の例を除けば、大阪の模擬天守閣の計画発表後のほぼ同時期に建設され、いずれもその経緯において大阪の影響を受けていることがわかった。戦国期城郭の城址に建設された模擬天守閣は、史実に基づいた復元志向はなく、城郭建築の疑似的意匠によっており、いずれも小規模かつ簡易な展望施設的建築であった。一方、近世城郭の城址に建設された模擬天守閣では、地域の人々の身体性を帯びた求心性が働き、文化的共有財としての象徴性があった。戦国期城郭の城址に建設された模擬天守閣が必ずしも精神的な求心性がなかったこととは対照的である。戦国期城郭が山城であるという立地場所や敷地規模による制約もあるが、むしろ廃城からの期間、換言すれば城址としての期間に起因しているとみられる。戦国期からは三百年余りを経ているが、明治維新からは六十年ほどである。こうした年月の差が地域の人々の城址に対する意識の違いに現れ、模擬天守閣や意義が異なる背景になったと考えられる。また、実現はしなかったが模擬天守閣の構想・計画のあった事例について史資料の収集を行った。さらに濠の埋め立てをめぐる議論の構図をみるため、賛否の議論が把握できた都市における史資料の収集も併せて行った。
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Research Products
(1 results)