2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代の城址における文化的景観の保全、創出、破壊の思想
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22560597
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野中 勝利 筑波大学, 芸術系, 教授 (40302400)
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Keywords | 城下町都市 / 城址 / 文化的景観 / 天守閣 / 近代化 |
Research Abstract |
本研究は、わが国固有の都市基盤である近世城下町を起源とする城下町都市の明治以降の都市づくりを文脈的に解釈するものであり、特に「城」に着目し、明治以降の「城址」を取り巻く動きを多面的かつ相対的に捉え、同時代的な城址の文化的景観の意味づけを行う。本年度では、戦前に建設された仮設の模擬天守闇について、その建設の背景、経緯と意義を分析した。具体的には、甲府と津山であり、いずれも共進会、博覧会の施設として模擬天守閣が建設されたが、その後取り壊され、現存していない。共進会は山梨県、博覧会は津山市が主催していることから、当時の議会議事録や地元紙、記録等を分析史料とした。1906年に甲府城址で開催された一府九県連合共進会では佐竹作太郎の寄付によって模擬天守閣が建設された。1936年に津山城址で開催された姫津線全通記念産業振興大博覧会では協賛会が模擬天守閣を建設した。甲府では藩政期には天守はなく、その意匠の拠り所はなかった。また二層の小規模な施設であったが、共進会入場者の約1割がこの施設にも入場した。入場者は模擬天守閣を仰ぎ見ながら会場である城址を回遊した。津山では維新期まで天守が存在していたが、模擬天守閣はその意匠とは大きく異なった。復元の志向はなく、ライトアップがされるなど近代の新たな眺望景観を生み出す意織があった。地域住民等からは取り壊すのではなく活用の要望が出され、津山市が寄贈を受けて管理することになった。いずれも仮設の木造施設であったが、実際に建設されたことで地域住民の共有財としての意識が芽生えた。このほか、濠の埋め立てをめぐる議論の構図、「存城」の払い下げと公園化についても史資料の収集と分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当時の議会議事録等が保存され、閲覧可能な都市があることで、一次史料による分析が可能となり、結論の有用性が担保されている。また対象都市の多くが震災による影響が軽微で現地調査の実施に支障が少ない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集した史資料の整理と分析を進めるとともに,対象都市での現地調査を行う。同時代的史資料、特に一次史料の探索を行い、有用性のある分析結果をもとに、とりまとめを行う。
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