2010 Fiscal Year Annual Research Report
出産・育児・就労に関わる女性のライフコースと住宅条件
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22560607
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平山 洋介 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70212173)
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Keywords | 女性 / 住宅 / 就業 / 子育て / 出生率 / ライフコース / 持家取得 / 住宅政策 |
Research Abstract |
(1)女性のライフコースと住宅に関する先行研究を検討した。このテーマのほとんどは欧米で実施されてきている。住宅所有形態の構成と出生率の関係、女性就労と福祉レジームの関係、出生率回復のための住宅施策の検討などに関する既往研究から、日本の状況を分析するために有効と思われる視点を抽出した。 (2)全国消費実態調査のミクロデータの独自集計にもとづき、子どもをもつ既婚女性の就業形態と住宅状況の関係を分析した。その結果、妻の就業形態(正規・非正規・家事専業の別)は、世帯の経済力を左右し、持家率を規定する一つの因子になっていることがわかった。これまでの住宅研究では、「男性稼ぎ主」の経済力が世帯全体の経済状態を決定するという暗黙の仮定があった。しかし、ここでの分析の結果は、男性稼ぎ主に加え、妻の就業状況が住宅事情を左右することを示している。この点は、住宅研究の伝統的な分析手法を改良する必要を示唆している。 (3)住宅・土地統計調査と全国消費実態調査のミクロデータの独自集計により、住宅事情と子どもの有無・人数の関係を分析した。この結果、子どもの多い世帯は、住宅面積が広い、住居費負担率が低い、建築年が古い、といった傾向をもつことが明らかになった。これは、「広い・安い」が子どもを増やす条件になっている、あるいは子どもの多い世帯が「広い・安い」を必要としていること、そして「広い・安い」が「古い」によって達成されている、ということを示している。重要なのは、子どもの有無・人数に住宅条件が関係していることが明らかになった点である。
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