2011 Fiscal Year Annual Research Report
有明海沿岸地域における干拓村落の形態多様性とその要因に関する研究
Project/Area Number |
22560614
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菊地 成朋 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (60195203)
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Keywords | 干拓集落 / 空間構成 / 形成過程 / 居住 / 有明海沿岸 |
Research Abstract |
本研究は,有明海沿岸地域において多様な展開をみせる干拓村落を対象に,開発に関する計画原理を読み解くとともに,形成・変容のプロセスを明らかにしようとするものである。2年目の本年は,散居村の形態をとる佐賀県白石町福富地区と小規模塊村の形態をとる佐賀県小城市芦刈地区を対象としたフィールドワークを実施した。 福富地区については,近世初頭においては必ずしも散居が展開していたわけではなく,むしろ集村が主流であったこと,近世後期以降に散居が普及していったこと,そのプロセスが当該地域特有の水利条件のもと佐賀藩が行った干拓事業とその後の改変によってもたらされたことが明らかとなった。さらに,典型的な散居形態をとる福富北区を対象に,集落空間構成の詳細調査を行った。その結果,圃場整備以前は各家がウラボリに雨水を溜めて水源としていたこと,生産と生活の水をこの個別の水源に頼っていたこと,ただし相隣間ではウラボリの共同利用がみられ,用排水の仕組みも小規模な単位で一定の秩序が形づくられていたことがわかった。これらは,散居形式が藩の政策などマクロな計画意志によって生み出されたのではなく,個別の営みの集積として形成されていったことを示すものである。芦刈地区については,近世初期の松土居築堤により耕地が安定化し,その内側の旧堤防微高地に集落が形成されたと考えられる。その後,松土居のさらに海側に鱗状干拓地が展開していったが,この部分には集落は形成されなかった。これらの干拓によって生産が拡大され,それに伴って松土居陸側の小規模集落群の屋敷数も増加した。その際,当初は旧堤防上に列状に形成された集落が,塊村状に変化した過程が明らかとなった。 このように,散居村の福富地区と小規模塊村の芦刈地区について,その独特の村落形態の成立要因に関する有効な見解が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおりの資料分析,実地調査を遂行できている。その結果,新たな発見もあり,当初は想定していなかった仮説が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた4地区のケーススタディは,この2年間でいずれも着手でき,一定の成果をあげることができた。最終年度である平成24年度には,これらのケーススタディを完成させるとともに,それらを比較考察することによって,本研究の主題である「有明海沿岸地域における干拓村落の形態多様性の要因」の解明を試みたい。
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