2011 Fiscal Year Annual Research Report
世界遺産カトマンズの谷の歴史都市における文化遺産の保全と市民防災計画に関する研究
Project/Area Number |
22560632
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
板谷 直子 (牛谷 直子) 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション機構, 准教授 (90399064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ROHIT Jigyasu 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション機構, 教授 (70573781)
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Keywords | 歴史都市 / 文化遺産保全 / 市民防災計画 / ネパール / 世界遺産 |
Research Abstract |
本研究は、いつ地震が起こってもおかしくないと言われる組積造の歴史都市であるカトマンズバレー(世界遺産)を事例に、地域のコミュニティ(生命)と有形無形の文化遺産(財産)を、市民が守る(共助)防災計画の策定について知見を得ることを目的としている。 平成23年度は、カトマンズバレーの歴史都市パタンに存するジャタプール地区において、文化遺産の価値評価調査を実施し、GISマップを作成した。また、南アジアの当該分野の情報の集積するインドも含めてヒヤリングを行い、関連制度等調査を行った。 文化遺産の価値評価調査は、重要な遺産価値を有する要素を特定し、防災・災害対応・復旧における優先順位をつけることを目的とした。価値評価を行う対象は、区域レベルでは当該地域を特徴づけるオープンスペースやこれらを結ぶ通路、建築物レベルでは伝統的家屋や共同施設や寺院、構成物レベルでは小祠堂、井戸、碑文、彫刻などである。これを、歴史的価値、美的価値、建築的価値、芸術的価値、リビングヘリテージの社会的・宗教的価値、それぞれの指標で評価し、結果をGISマップに表した。ここに防災と災害対応のリソースや、構造的は脆弱性と重ね合わせることで、市民にとってもわかりやすい文化遺産としての価値とその資源性および危険性を把握する基礎資料を準備した。 関連制度等調査は、世界遺産カトマンズの谷のパタン登録資産地区のコアおよびバッファーゾーンの文化遺産保全に関する政策や建築基準および都市計画から課題を抽出しようとしたものであり、現行の建築基準は遺産価値や伝統的家屋の修理や補強、調査について考慮に入れていないこと、パタンの行政機構の中で、遺産部門と地震安全性・建設許可部門の間にタテの繋がりが実質的に存在しないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネパールの世界遺産カトマンズの谷の歴史都市としての価値は、人々の生活と、有形無形の文化遺産が一体となったリビングヘリテージにあるとされているが、リビングヘリテージの構成要素はインベントリーされておらず、阪神淡路大震災の際にもそうであったように、復興の過程で、人々の生活の記憶とともにあった重要なものが、知らぬ間に失われてしまうといった事態を招く可能性がある。組積造の歴史都市において、この価値を含めた文化遺産防災計画の立案が本研究の重要なポイントである。本年度までにこの結果を市民が共有できる地図にする手法を提示できたので、おおむね順調に進展していると言えるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの調査の結果を統合し、総合的なリスク評価地図を作成する。そして、これをもとに避難計画、救援計画等、文化遺産防災ドリルを立案し、市民とともにワークショップを行い検証する予定である。成果は、現在査読を進めていただいている論文も含め、国内にとどまらず、国際シンポジウム等で公表を進めるよう準備を進めている。
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