2011 Fiscal Year Annual Research Report
クールルーフの観点から熱性能を高めた瓦屋根の再構築~瓦及びその工法の開発
Project/Area Number |
22560634
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
木下 光 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (90288796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 ひろ志 関西大学, 環境都市工学部, 専任講師 (50254462)
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Keywords | 瓦 / クールルーフ / 熱性能 / 景観 / 工法 / 多孔質 / 吸水率 / 環境工学 |
Research Abstract |
研究成果は大別すると三点あり、それは瓦の製法と規格に関する再検討、モックアップを用いた熱性能実験、沖縄における伝統的瓦屋根の評価である。以下、その内容をまとめる。 1)瓦の製法と規格 1954年に瓦がJIS規格に制定されて以降、瓦は形状が53版(1坪あたり53枚使用)への収斂、高い寸法精度や低い吸水率への評価という今日の流れをつくった。これに加えて焼成温度の高い瓦を性能の良い瓦とするため、本来、どこでも採取できる粘土を用いた地域的建築素材ではなくなっており、かつ環境工学的視点による瓦の評価が含まれていないことが指摘できる。 2)モックアップを用いた熱性能実験(関西大学千里山キャンパス) 900×1800mmや1800×1800mmのモックアップ(実験体)を用いて、実験を行っている。八女の葺き替えで指摘された瓦裏の空気層や、二重野地板による空気層はともに効果的であることが測定され、乾式工法における下地のつくり方として推奨できる。砂入りのだるま窯による瓦が最も吸水率が高かった。また、焼成温度が低く、吸水率の高い瓦は、熱伝導抵抗が大きい、すなわち熱を伝えにくい瓦であることが明らかになった。 3)沖縄における伝統的瓦屋根(国指定重要文化財中村家住宅)の評価 琉球竹とサンゴを含む葺き土が遮熱だけでなく、吸湿としての性能を有しているのではないかということ、本葺き屋根でも丸瓦が高く、平瓦の幅の狭い、すなわち陰をつくる、ヒダの多い屋根形状であること、軒先や大棟に設けられた雀口とよばれる換気口、かまどの吹抜けや天井の工夫などによって空気の流れをつくりだすディテールの重要性が明らかとなり、その結果、小屋裏温度湿度はほぼ外気と同じ状態にあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
瓦の熱性能をどのように高めるかという切り口が瓦の製法に関する研究、モックアップによる実験、伝統的な瓦屋根建築の分析から明らかになった。それは、1)瓦の粘土成分、練り方および焼成手法、2)下地の空気層、面外方向の空気の移動、3)換気口のデザインとディテールの三点である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の進め方は、二点ある。一点は、瓦の粘土成分、練り方、焼成方法をかえながら、吸水率が高く、熱伝導抵抗の高い、すなわち熱をとおしにくい瓦の試作を行うことである。もう一点は、より薄い瓦を制作し、瓦を重ねることで、瓦それ自体の孔でも下地の空気層でもない、瓦間の空気層の果たす役割を実験することである。また、沖縄の伝統機瓦屋根の熱性能の研究に関しては、ブックレットにまとめることを最終成果としたい。
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Research Products
(5 results)