2011 Fiscal Year Annual Research Report
古代日本の宮殿の建築的特質と歴史的意義に関する研究
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22560644
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
溝口 正人 名古屋市立大学, 大学院・芸術工学研究科, 教授 (20262876)
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Keywords | 宮殿建築 / 平安宮 / 宮殿 / 東アジア / 宮都 / 大極殿 / 寝殿造 / 渤海 |
Research Abstract |
本研究は、古代宮都の完結形となった平安宮の宮殿建築を主たる対象として、日本における宮殿に採用された建築形式について分析し、宮殿建築の社会的性格や、採用された建築形式はどのようなものであったか、そしてそれは中国を中心とした東アジア文化圏においてどのように位置づけられるものかを明らかにして、宮殿建築にとどまらず日本の建築がどのような志向性を持ち成立したかを比較文化的な視点からの知見も得ることを目的としている。 そこで本年度は、平安宮大極殿の整理分析を行った前年度を承けて、東アジア諸国の宮都における中核殿舎の建築的な実態検討を、主に文献による考古学的な情報をもとに行った。東アジア地域の古代宮殿建築では、平壌東郊の安鶴宮のように建造年代に関する考古学的な見解が分かれている遺構がある。考古資料と文献史料の整理・検討によって、同時代の中国を頂点とする東アジア地域の宮都の中核殿舎の実態把握・整理を行った。特に渤海上京龍泉府の遺構の再検討を行い、従来の遺構解釈とは異なる可能性を見いだした。この成果を踏まえて改めて安鶴宮との比較を行い、安鶴宮の遺構の再検討を行った。あわせて日本における宮殿建築の空間的な特殊性を確認するために平安時代における宮殿と貴族住宅の比較、さらには寺院建築との比較を行った。後半の分析に関しては、その結果として論考1編「寝殿造の空間と庭園-平安時代の庭園と建築の関係に関する基礎的考察-」を発表した。この論考では、平安時代の貴族住宅として想定されている寝殿造の事例と平安宮内裏、また平安時代に頻出する浄土系庭園を伴う阿弥陀堂系の仏堂の事例について、空間的なスケールの差異を指摘しているが、その結果として、改めて宮殿建築の規模的、空間的な実態が一般貴族住宅とは同列に比較できないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学科主任を担当した前年度は資料整理が主となった。資料整理の蓄積は十分に行えたが、予定していた海外調査を組み込むことができなかった。論考としての成果が1編にとどまっている点で若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年度にデータは整理できているので、それをもとに2012年度は論文をまとめる予定である。また後半では、東アジアの宮都の規範といえ、遺構の年代などの見解が別れている中国長安の大明宮含元殿址を分析するため、前年度での実施を見送った中華人民共和国における実態確認調査を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)