2011 Fiscal Year Annual Research Report
炭素繊維材を用いた伝統的建築物の保存補修法に関する研究
Project/Area Number |
22560645
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Research Institution | Institute of Technologists |
Principal Investigator |
北條 哲男 ものつくり大学, 技能工芸学部, 教授 (30348346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 晋一 ものつくり大学, 技能工芸学部, 准教授 (20406614)
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Keywords | 炭素繊維 / 保存修理 / 歴史的建造物 / 耐候性 / 暴露試験 / 環境試験 / 漆 / 耐久性 |
Research Abstract |
本研究は、世界に誇る我国の重要な伝統的木造建造物を、炭素繊維材の高機能性を利用して補強・補修する方法を確立し、新たな保存修復法を構築することが目的である。そのための研究方法として、温度・湿度等の環境条件が木質材料の補強部劣化に及ぼす影響に関して、環境試験・促進耐候性試験にて分析を行なうものである。その結果を踏まえ、耐久性に優れた補強材料や補強方法を考案し、重要文化財等の解体修理の際に当初材再利用率を高める新たな手法を開発し、最終的には保存補修法の設計・施工指針の基本方針の策定を目指すものである。 平成23年度は、環境試験・促進耐候性試験を行い以下の成果を得た。 1.温度・湿度の環境条件が炭素繊維複合材に及ぼす影響を調査するため、恒温室を用いた環境実験を行ない、長期的な環境履歴を試験室にて再現する実験を行った。試験体として米松(長さ:550m×幅:60mm×厚さ:30mmを用い、恒温室にて80℃・-20℃・95%RHの温度変化を750時間与え、その曲げ強度を測定した。曲げ試験の結果、炭素繊維補強材の曲げ剛性の低下を確認した。この要因に関して、付着特性が曲げ強度に及ぼす影響を分析する予定である。 2.炭素繊維材に漆塗装を施した場合の漆塗面の変質状況に関しては、短期間で耐候性が評価可能な屋外促進暴露試験(EMMAQUA)を行った。試験体として、炭素繊維板の漆塗装10種類と比較材として木材の漆塗装10種類を用い、表面状態の色差・光沢などの長期的な変化を測定中である。材質の特性による表面特性の相違点の分析を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した環境試験・促進耐候性試験を以下のように実施している。 1.温度・湿度の環境条件が炭素繊維複合材に及ぼす影響を調査するための環境試験について、試験条件を設定して実施し、曲げ強度の低減する状況について予定通り分析することができた。 2.屋外促進暴露試験(EMMQUA)を用いて、炭素繊維板の漆塗装および木材の漆塗装の色差・光沢などの変化について、予定通り試験を実施して評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も当初計画通り、環境試験・促進耐候性試験を以下の内容で実施し、結果を総括する予定である。 1.温度・湿度の環境条件が炭素繊維複合材に及ぼす影響を調査するための環境試験について、これまでの実験結果を踏まえて新たな試験条件を設定する。最終的には、付着強度が曲げ強度に及ぼす影響を把握する予定である。 2.屋外促進暴露試験(EMMAQUA)を用いて、炭素繊維板の漆塗装および木材の漆塗装の表面特性の変化を把握する予定である。また、伝統的建造物に用いられているにかわ塗装に関しても、同様の屋外促進暴露試験で評価の予定である。 3.最終年度に当たるため、上記の研究結果を総括して保存補修法の設計・施工指針に資するデータとしてまとめる予定である。
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Research Products
(1 results)