2010 Fiscal Year Annual Research Report
近世建築に使われた木曽ヒノキの流通に関する年輪年代学的研究
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22560652
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
光谷 拓実 総合地球環境学研究所, 研究推進戦略センター, 客員教授 (90099961)
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Keywords | 年輪年代学 / 近世建築 / 木曽ヒノキ / 木材流通史 |
Research Abstract |
本研究は、日本各地の近世建築に使われた木曽系ヒノキに焦点をあて、その流通に関する実態を使用部材の年輪年代学的な手法を用いて明らかにすることを目的とした。調査分析にあたっては、長野県産ヒノキの年輪データで作成した長期の暦年標準パターンを基準パターンとし、これとの同調性が高いものに着目することによって木曽系ヒノキかどうかを見分けることとした。これは、産地が近ければ近いほど年輪パターンに産地の特徴があらわれるため、その同調性が高いかどうかをその拠としている。本年度は、京都府下に所在する国宝慈照寺銀閣・東求堂、知恩院集会堂に焦点をあて、調査を実施した。 慈照寺銀閣と東求堂の2棟は室町時代のものであるが、木曽系ヒノキが近世以前にも京都で流通していた可能性を探るため、調査を実施した。その結果、2棟の該当建物には、すでに木曽系ヒノキが柱や天井板、床板などに使われていることが明らかになった。このことは、京都において江戸時代以前から木曽系ヒノキが主要な建物に使われていたことになり、木曽系ヒノキの木材流通史を考えるうえで、画期的な発見といえる。 知恩院集会堂の部材調査は、まだ分析中であるため全体像は見えてこないが、天井板などには木曽系ヒノキが使われていることを確認した。 平成22年度の調査から、長野県産ヒノキの暦年標準パターンは木曽地域を代表する特徴的な年輪パターンを呈しているため、近世建築部材のなかから木曽産ヒノキの同定が可能であることを実証したことになり、わが国における近世木材流通史の分野を新視点で切り開くものである。
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Research Products
(1 results)