Research Abstract |
本研究の目的は,計装化押込み試験法によって,米粒ほどの微小試片から引張クリープの構成式(クリープ速度,応力,温度,微視組織の関係)を予測できることを示すことである。これを実現するため,モデル材料としてAl-Mg固溶体合金(応力指数η〓3)を選び,押込みクリープ試験とその有限要素シミュレーションを実施した.主な結果を列記する.(1)円錐形圧子による押込み圧力pと押込みクリープ速度〓が一定なとき(ρ=ρs,〓=〓(s)〓α,α:荷重増分パラメーター),圧子直下の領域において,相当応力δと相当塑性歪み速度〓の等高線パターンは押込み深さに対応して幾何学的な自己相似性を保ちながら拡がっていく.このときδと〓の分布は押込みクリープ中に変化しないと見なせるため,擬定常状態変形が実現している.(2)押込み速度を実質的に支配する領域をコントロールボリューム(CV)と呼ぶことにする.その範囲は〓≧α/180で定義でき,αに比例することから,荷重速度に依存することが分かる.(3)CV内の変形挙動を代表する点のδと〓には,各々,δ=C_1ρs=ps/3,〓C_2〓in(s)=α/3.6という関係がある.ただし,C_2値は応力指数に依存する,(4)弾塑性FEシミュレーションから得られた圧子の押込み変位の時間変化:押込みクリープ曲線は,剛完全塑性体に関する理論から導かれた式でよく表すことができる.また,この曲線を理論式によって解析して得られた応力指数πは,有限要素に設定したη値と一致する.(5)Al-Mg固溶体合金に関する押込みクリープ試験から得られたクリープの活性化エネルギーと応力指数は,従来の引張クリープ試験による結果とよく一致する.(6)押込みクリープ試験によるデータ(ps,〓in(s),T)から,δ=ρs/3と〓=α/3.6の関係を用いて変換することにより,引張クリープの構成式(δ,〓,T)を予測することができる.ここで予測された引張クリープの構成式は,これまでに引張クリープ試験から得られた式とほぼ一致する.
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