2010 Fiscal Year Annual Research Report
軟エックス線分光によるプロトン導電体の伝導領域における電子構造と不純物濃度
Project/Area Number |
22560670
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
樋口 透 東京理科大学, 理学部・応用物理学科, 講師 (80328559)
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Keywords | 軟エックス線発光分光 / プロトン導電体 / 電子構造 / 不純物濃度 / 酸素欠陥 / 価電子帯 / 混成軌道 / 結合距離 |
Research Abstract |
22年度は、高いプロトン伝導性を示すとされるY-doped BaCeO_3セラミックス・薄膜の作製と評価および軟X線発光分光器の高分解能化を目的として研究を行った。 Y-doped BaCeO_3セラミックスは、固相反応法により作製し、X線回折・組成・電気伝導度の評価を行った。このセラミックスをターゲットとして用いることで、RFマグネトロンスパッタ法により薄膜化した。薄膜は、単一方向への配向性を示し、水蒸気雰囲気下において明確なプロトン伝導性を示すことを明らかにした。このプロトン伝導性は、成膜後のO_2雰囲気中の熱処理温度に強く依存していることも明らかにした。 次に、軟X線発光分光器の高分解能化のために、出射スリットの改造、光を検知するダイオードの設置、微弱信号を検知する上で必要となるデジタルマルチメータを設置したところ、短時間で高強度かつS/N比の良い吸収スペクトルを得ることに成功した。 高分解能化した軟X線発光分光を用いて、Y-doped BaCeO_3セラミックス・薄膜の電子構造の測定を行ったところ、価電子帯は02p-Ce4f混成軌道、伝導帯はCe4f軌道で形成されていることが明らかになった。この価電子帯構造は、試料作製条件に依存し、O2p-Ce4f混成軌道の変化として観測された。また、セラミックスと薄膜でも、価電子帯構造の違いが見られていることから、熱処理により酸素欠損の量に変化が出たことで、結晶構造中のO原子とCe原子の結合距離の変化に起因していることを明らかにした。
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