2011 Fiscal Year Annual Research Report
軟エックス線分光によるプロトン導電体の伝導領域における電子構造と不純物濃度
Project/Area Number |
22560670
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
樋口 透 東京理科大学, 理学部・応用物理学科, 講師 (80328559)
|
Keywords | 軟エックス線発光分光 / プロトン導電体 / 電子構造 / 不純物濃度 / 酸素欠損 / 価電子帯 / 混成軌道 / 結合距離 |
Research Abstract |
23年度は、Y-doped BaCeO3薄膜のプロトン伝導性の評価と軟X線分光による中高温域での電子構造の測定を行った。 スパッタ法で作製した膜は、200~500℃で0.3eV程度の低い活性化エネルギーを持つプロトン伝導性が確認された。面内方向のプロトン伝導性の評価では、バルクセラミックスに匹敵する伝導度を示した。垂直方向では、プロトン伝導性を示すものの、約90%の粉界抵抗を持つことから、プロトン伝導性が減少する要因となっていることを明らかにした。 軟X線分光の測定において、CeサイトにYイオンが置換されていることを確認した。Yイオンを置換する前は、Ceは3価と4価の混合原子価状態を持つが、Y置換によりCeは安定な4価の状態になっていることが明らかになった。酸素1s領域の吸収スペクトルから、酸素雰囲気中での熱処理に伴う酸素量の変化が現れ、200℃までの温度での酸素量の変化も見られた。これは、結晶内でプロトンが移動する際にO-H結合を繰り返していることを示している。また、光電子分光のよる価電子帯付近の電子構造測定では、フェルミ準位は価電子帯側に位置し、プロトンの導入に伴いフェルミ準位が変化する様子が観測された。価電子帯トップとフェルミ準位のエネルギー差は、伝導度のアレニウスプロットから得られる活性化エネルギーと一致していることを明らかにした。 以上の結果は、プロトンが伝導する温度域において、不純物濃度の変化を示す間接的な証拠であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地震の影響により、6月までは測定場所である高エネ研が使用出来なかった為、研究開始が7月からとなったが、200℃までの電子構造の測定が可能となり。不純物濃度や詳細な電子構造を明らかにできた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は薄膜を中心に取扱い、400℃までの電子構造測定を行う。現時点では十分なビームタイムを確保しており、時間をかけて。慎重に測定を行えば、研究に支障は出ない。発光分光器で支障が出るようであれば、高分解能光電子分光の測定を行う。
|