2012 Fiscal Year Annual Research Report
軟エックス線分光によるプロトン導電体の伝導領域における電子構造と不純物濃度
Project/Area Number |
22560670
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
樋口 透 東京理科大学, 理学部, 講師 (80328559)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 軟エックス線発光分光 / プロトン導電体 / 電子構造 / 不純物濃度 / 酸素欠損 / 価電子帯 / 混成軌道 / 結合距離 |
Research Abstract |
24年度は、Al2O3基板上に作製したBaCed0.9Y0.1O3薄膜の膜厚及び酸素欠損量とプロトン伝導性の相関を電気特性だけでなく、軟X線分光による電子構造の研究を行った。 薄膜の厚さを20~600nmの間で任意に変化させ、構造・電気特性を評価した。薄膜の厚さを変えても、a,c軸への強い配向性は変化せず、キャリアーの置換量も一定であった。格子定数は、膜を厚くするとともに増加した。300~700°C域での電気特性は熱活性型の振る舞いを示した。膜が薄い50nmの領域では、伝導度は減少し、非常に大きな活性化エネルギーを持っていた。しかし、膜を厚くすると、伝導度は大きく向上し、活性化エネルギーはバルクセラミックスの半分以下になった。これは、格子定数が減少したことで、O-O結合距離が減少し、結晶中に取り込まれたプロトンがホッピングしやすくなったことに起因している。 軟X線分光により、単結晶薄膜と本研究のスパッタ薄膜の電子構造を研究した。O1s-X線吸収の測定から、この2つの膜のBa, Ce, Y組成の変化は観測されないが、スパッタ薄膜の酸素量は劇的に減少していた。また、Fermi準位の位置にも大きな違いが見られた。単結晶膜での電気特性は、バルクセラミックスよりも3桁程度低くなっていることから、結晶中に形成された酸素欠陥が薄膜のプロトン伝導性を向上させる大きな要因になっていることを明らかにした。 以上の結果から、プロトンが伝導する中高温域において、薄膜で高いプロトン伝導性を実現するためには、O-O結合距離の制御と結晶性を大きく低下させない程度の酸素欠損量が必要であると結論づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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