2011 Fiscal Year Annual Research Report
パルス通電焼結における高速焼結機構の解明と高度化に向けた技術構築
Project/Area Number |
22560675
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
森田 孝治 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端材料プロセスユニット, 主幹研究員 (20354186)
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Keywords | パルス通電焼結(PCS) / 酸化物セラミックス / 焼結機構 / パルス効果 |
Research Abstract |
【研究目的】 酸化物セラミックスのスピネルMgAl204をモデル材とし、下記2項目について、パルス通電焼結(PCS)法の焼結原理・機構の基礎知見の取得を目的とした。 (a)PCS法における焼結の律速機構:PCS法において緻密化速度を決める律速過程の解明を目指す。 (b)HP焼結との比較:HP焼結(加熱+圧力)を行い、PSC法(加熱+圧力+パルス通電)との比較を行い、PSC焼結機構、特にパルス通電効果の解明を図る。 【結果・知見】 (a)PCS法において、応力負荷の開始温度を昇度中(1000℃)から焼結温度(1300℃)の範囲で変化させ、その際の焼結挙動について検討した。昇度中の低温域で応力負荷した場合に比べて、高温域、特に焼結温度の1300℃において応力したものにおいて透光性を得られる程に緻密な焼結体が得られることが確認された。また、焼結密度は、応力負荷の速度にも依存し、短時間負荷において比較的良好な緻密体が得られることが確認された。上記の結果と前年度に得られた知見を合わせて検討すると、焼結中の粉末同士が互いに接触する微小領域における塑性変形が焼結挙動および緻密化に強く影響していることが推察できる。つまり、低温域で応力負荷すると、接触面積が小さい微小領域のみで塑性変形が起こるため、粉末間に強固なインターロックが形成され、それ以後の焼結の進行が阻害され、残留欠陥が形成されると考えられる。 (b)同じ温度・昇温速度・応力状態におけるHP焼結とPCS焼結法におけるスピネルの焼結挙動および緻密化(透光性)を比較することにより、パルス通電効果について検討した。比較の結果、HPとPCS法いずれの場合もほぼ同じ焼結挙動および透光性が得られることが確認された。このことから、スピネルのような絶縁体の場合は、従来想定されていたようなパルス通電の効果は無いか、あったとしても非常に小さく、無視できる程度で、既存のHP焼結と同じ緻密化機構で焼結が進行すると結論できる。 【連携研究者】 金炳男主席研究員(物質・材料研究機構・先端材料プロセスユニット・セラミックスグループ) 目義男グループリーダ(物質・材料研究機構・先端材料プロセスユニット・セラミックスグループ)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
より詳細な発現機構の理解・解明には更なる追加実験が必要ではあるが、種々の焼結条件および既存の焼結手法(HP法)との比較・検討により、酸化物セラミックスにおける焼結機構とパルス通電効果について一定の理解が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
パルス通電焼結(PCS)法の最大の特徴は、パルス通電にあるが、本手法では上記の通り絶縁体においてはその効果は皆無に等しいと考えられる。一方、近年報告されたフラッシュ焼結法は、通電効果が酸化物セラミックスの焼結に効果的であることが報告されている。今後は、この相違を検討し、パルス通電焼結(PCS)法の高度化に向け技術構築を目指す。
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